|  TOPへ  | 略歴  | 著書・論文  | 調査報告書  | 過去記事  | 連絡先  |
最終更新日:2013年6月1日

自己紹介

松井 克浩(まつい かつひろ)
専門は社会学理論と災害社会学です。理論の方は、マックス・ヴェーバーを読みながら、支配や権力の問題、秩序やコミュニケーションを成り立たせるメカニズムといったことを考えています。災害研究では、主に中越地震・中越沖地震の被災者・被災コミュニティの調査をしてきました。最近は東日本大震災による広域避難者の問題に関心をもっています。
略歴] [主要業績

最近の仕事・雑感

これ以前の記事

2013年6月8日

柏崎市で原発避難者の支援に取り組んでいる「共に育ち合い(愛)サロンむげん」の“姐さん”に「特別講義」をお願いしました。原発避難の生々しい様子、具体的な支援の様子や支援に対する考え方、活動を動機づけるものなど、お話しは具体的で迫力のあるものでした。学生さんには、私が話すよりも100倍刺激になったと思います。ありがとうございました。

2013年6月1日

中野敏男さんからいただいた『マックス・ウェーバーと現代・増補版』(青弓社)を読む。30年前に出版された原著の内容が全然古びていないのに驚く。ヴェーバーを読むスタンスは中野さんと私とではずいぶん違っているのだが、強い緊張と内省をはらんだ議論には、いつも惹かれている。

中野敏男さんの特徴である容赦のない徹底的批判は、ともすれば「出口なし」の状況に結びつくのではないかと感じることもある。しかし、ズルズル引きずられ奈落の底に落ちていくような無責任体制を前にすると、やっぱり切っ先鋭い批判の刃を手放さないことが必要なのかとも思う。

私自身は相変わらず、曖昧さや弱さを含みこみながら漸進的に社会を変えていく手がかりとして、ヴェーバーのなかに「ゆらぎ」や「別様の可能性」を読み込んでいきたいという構想をもっている。あまり勝算はないけど、もう少しこの観点にとどまって考えてみたい。

2013年4月25日

『感情と表象の生まれるところ』

同僚の栗原隆先生が編集した共著『感情と表象の生まれるところ』が刊行されました。私自身は、中越地震や東日本大震災に関する調査をふまえた、「「場所」をめぐる感情とつながり―災害による喪失と再生を手がかりとして」という章を担当しています。どうぞよろしくお願いします。
以下に、出版社のHPにある紹介文を貼っておきます。

--------------------------------------------------
栗原隆編『感情と表象の生まれるところ』ナカニシヤ出版
(A5判・256頁,税込定価 2730円,ISBN978-4-7795-0739-7,2013年4月)

多角的な観点から人の「心の動き」に迫る
私たちの感情や表象はどのような仕組みで生まれ、どのような役割を果たすのか。
いま人間の「感性」が失われつつあるという危機感の下、哲学・心理学・社会学・美学・文学など多彩な観点から、人間の「心の動き」に迫る共同研究の成果。

(主な内容)
 I 感情と心理
第一章 愛しいものを左側で抱く理由…………………………………………鈴木光太郎
第二章 魅力の源泉を求めて……………………………………………………福島 治
第三章 視覚‐運動協調の発達…………………………………………………白井 述
第四章 感応と測定………………………………………………………………井山弘幸

 II 感性と生のつながり
第五章 学問の起源とミメーシスの快…………………………………………宮﨑裕助
第六章 現象の形式へ……………………………………………………………城戸 淳
第七章 イエスの原風景とイエスの物語………………………………………堀 竜一
第八章 信頼が地域づくりにもたらすもの……………………………………杉原名穂子
第九章 「場所」をめぐる感情とつながり……………………………………松井克浩

 III 表象と生の広がり
第十章 祈りの言葉とイメージの力……………………………………………細田あや子
第十一章 他者の苦しむ顔を見る………………………………………………番場 俊
第十二章 オートバイによって映画は何を描くのか…………………………石田美紀
第十三章 瞬間と全体……………………………………………………………栗原 隆

2013年3月15日

愛媛大学法文学部人文学科講演会

愛媛大学法文学部人文学科と新潟大学人文学部の学術交流の一環として開催された講演会で、話をしてきました。愛媛から見ると東日本大震災も中越地震もやや「遠い話」かと思いましたが、熱心に聞いていただき、鋭い質問も頂戴しました。また、ご一緒した寺谷先生のお話は、楽しく、かついろいろ考えさせられるものでした(ワインの試飲付き!)。
温暖でコンパクトな松山の街も印象的でした。大学から徒歩圏内に、(道後温泉を含む)あらゆるものがそろっている感じで、新潟から見るととてもうらやましかったです。おつきあいいただいた先生方、本当にありがとうございました。

人文学科講演会
日時:平成25年3月13日(水) 15:00~17:30
場所:愛媛大学 法文学部本館8階 大会議室

松井克浩(新潟大学人文学部教授) 「災害への対応と地域コミュニティ」
新潟県は、近年連続して二度の大地震に見舞われました。この経験の中には、今回の東日本大震災からの復興に、あるいは今後も予想される災害への対応に、 生かされるべき点も数多く含まれていると考えられます。今回の講演では、災害時に地域コミュニティが果たした役割や災害に強いコミュニティの条件、そしてコミュニティが失われた場所で新たなコミュニティをつくり出す試みなどを取り上げて、考察していくことにします。

寺谷亮司(愛媛大学法文学部教授) 「南アフリカ共和国のワイン産業」
南アフリカ共和国のワインは,地中海性気候であるケープタウン周辺で造られ、生産量では世界第8位の地位にあります。同産地の近年の新動向として、①(ブティック)ワイナリーの増加、②ボルドー化(ピノタージュなどの固有ブドウ品種の地位低下)、③黒人関連ワイナリーや活動の始動、④輸出の増加、⑤様々な付加サービスを有したワイナリーの個性化などが指摘され、とりわけ前2者は世界的にみても普遍的現象となりつつあります。

2013年2月28日

広域災害避難者支援の現状と課題

地域デザイン学会東北・新潟地域部会の公開研究会として、下記の催しがあります。参加費無料・申し込み不要とのことですので、関心のある方はおいで下さい。

地域デザイン学会 東北・新潟地域部会 公開研究会
広域災害避難者支援の現状と課題

日時:2013年3月7日(木)14:00~16:00(開場13:30)
場所:新潟県立大学1号館1203中会議室

基調報告:「広域災害避難者支援の現状と課題」
村上岳志(広域災害避難者支援機構設立発起人)
福島第一原子力発電所事故による避難者の現状を各地で調査し、支援方法への課題を報告いただきます。

討議:「広域災害避難者支援方法の向上に向けて」
コメンテーター:
松井克浩(新潟大学人文学部教授)
内田亨(新潟国際情報大学情報文化学部教授・地域デザイン学会会員)
総合司会:山中知彦(新潟県立大学国際地域学部教授・地域デザイン学会会員)

主催:地域デザイン学会 東北・新潟地域部会
共催:NPO法人FLIP設立準備室
後援:新潟県立大学

2013年1月15日

日本村落研究学会東北地区研究会

仙台で開催された「村研」の地区研究会「東日本大震災後の村落研究と生活再建をめぐって」で、報告(話題提供)をしてきました。

日 時:2013年1月12日(土)11時~13時
会 場:東北大学川内南キャンパス文科系総合研究棟10階・1001号室
内 容:
1.震災に係る研究者による話題提供
 吉野英岐会員(岩手県立大学)
  「東日本大震災後の農山漁村コミュニティの再生と課題」
 加藤眞義会員(福島大学)
  「科学研究費基盤A「東日本大震災と日本社会の再建」の趣旨と活動内容について
/福島の状況と村落研究」
 松井克浩会員(新潟大学)
  「中越地震の経験から考えること」
2.出席者によるラウンドテーブル(情報・意見交換会)
 テーマ:村落生活の再生とこれからの震災研究の進め方について

私の報告では、①これまで新潟県で起こった災害の経験を記録する仕事をしてきたが、東日本大震災とは規模や性格による違いが大きく、うまくつながらないと感じていること、②「成功例」を表面的に移植したり、成功体験に固執することには問題があること、③失敗経験も含めて、きちんと記録し伝達することが重要であること、という視点から、いくつかの事例を取り上げました。私自身の情けなさやヘタレな部分が基調をなす話題提供となりました(いつものことですが)。

意見交換の中では、村研が今回の大震災にかかわってどのような役割が果たせるのか、ということが議論の焦点になりました。その結果、①今回の震災で大きな被害を受けた農村や漁村のことは、都市のサラリーマン世帯とは異なる視点から捉える必要があること、②震災により「失われたもの」を知るためには、もともとの村落やコミュニティの姿をつかんでおく必要があること、などの点で、これまでの村研の蓄積が活かせるし、また活かすべきであることが確認されたと思います。
私自身は長年村研の幽霊会員と化していましたが、村研の蓄積をふまえた上で災害研究に携わってみたいと、あらためて考えた次第です。

午後は、引き続き行われた「村落研究を語る会」に参加し、岩本由輝先生の「中村吉治と共同体を考えよう」というご報告を拝聴しました。中村吉治の評伝とあわせてその共同体論の勘所をご紹介いただき、とても勉強になりました。中村の歴史把握の妥当性について論評する能力はありませんが、共同体を捉える思考枠組みに関しては学ぶところが大きかったです。すぐに何かに応用できるという性格のものではないでしょうが、物事を根本的に考えるためのヒントが詰まっていると感じました。

2012年12月24日

上海出張・華東理工大学講演

上海にある華東理工大学で講演をしてきました。新潟大学人文学部と華東理工大学社会公共管理学院との研究交流協定にもとづくもので、今年の9月まで1年間人文学部で教鞭をとられた華東理工大学の兪慰剛先生からお招きいただきました。
12月20日(木)の午前中に、社会公共管理学院の先生方とお互いの研究テーマなどについて意見交換するセッションがあり、午後は主に修士課程の院生さんを対象とした講演を行いました。
タイトルとだいたいの内容は下記の通りです。

「震災復興とコミュニティの役割」
1.はじめに:コミュニティの視点
2.阪神・淡路大震災:都市災害の問題
3.新潟県中越地震:農山村地域の復興課題
4.東日本大震災:復興への支援・津波被災地の状況・原発避難の状況
5.むすび:コミュニティ・復興の時間・被災者にとっての復興

阪神の孤独死の問題や中越でのコミュニティの役割、東日本大震災における「対口支援」の様子や復興の難しさ、原発避難を強いられている人びとのコミュニティ再生への苦闘などについて取り上げて話しました。
通訳を交えて2時間近く話し、その後1時間近く質疑応答が続きました。主な質問としては、市民からの寄付の使途について情報公開はなされているのか? 災害復興における政府の役割は? コミュニティの崩壊を防ぐシステムは整備されているのか? など難しいものが多く、また多岐にわたりました。熱心に話に耳を傾け、質問してくれた院生の皆さん、面倒な通訳を引き受けて下さった除先生に感謝します。

講演会の様子は下記の、華東理工大学HPに掲載されているようです(中国語です・・・)。
http://cpsa.ecust.edu.cn/Show.aspx?info_lb=590&info_id=1815&flag=589

翌12月21日(金)は、午前中に兪慰剛先生の大学院の授業に加えてもらって、市内の上海都市計画展示館を見学しました。またこの日の午後は、院生の張さんに、浦東新区・上海外灘・豫園・田子坊と案内していただきました。急速な発展の渦中にある上海の全体像を展示館で概観した上で、その先端部分と歴史的な部分を垣間見ることができて、とても勉強になりました。

3泊4日の短い滞在でしたが、上海という町の途方もないエネルギーとスピードが感じられる旅になりました。最初から最後まで行き届いたご配慮をいただいた兪先生には、感謝の申し上げようもありません。これからも地道に交流を重ねていく、その一端を担っていければと思います。

2012年12月17日

国際地域研究学会

新潟県立大学の先生方が中心となって運営されている「国際地域研究学会」の本年度大会・企画セッションで報告を担当してきました。3人の報告者の分野は違うのですが、関心の重なりが大きく、私自身たいへん勉強になりました。
セッションのテーマは「地域の発展」でしたが、発展というよりも、どのようにして地域の存続・継承をはかるのか、そこに〈記憶の共有〉や〈ゆるやかなつながり〉といった要素がどのようにかかわるのか、といった点が報告や議論の焦点となりました。

国際地域研究学会大会2012年度大会
日時:2012年12月16日(日)13時~
場所:新潟県立大学1号館
(企画セッション)
・テーマ 「地域の発展-Regional Development」
・基調報告
 坂井秀吉(新潟県立大学・経済学)「地域経済の活性化と大学の貢献」
 松井克浩(新潟大学・社会学)「震災からの地域の復旧・復興」
 山中知彦(新潟県立大学・建築学)「意識集合としての地域」
・3人によるパネルディスカッション
(この後、自由セッション)

2012年11月12日

『防災の社会学〔第二版〕』

2008年に出版された初版が売り切れたということで企画された第二版が、このたび刊行されました。昨年の東日本大震災をふまえて、いくつかの章が新たに加えられ、初版から引き継いだ章についても多くが加筆・補正されました。
私の担当章「防災コミュニティと町内会」についても、既存の部分を圧縮した上で、2010年に行ったアンケート調査のデータを加えています。さらに、「補論 コミュニティの喪失と再構築」として、原発事故による福島県からの避難者に対する支援について取り上げました。1年以上前の聞き取りにもとづいているので、現時点ではもっと書くべきことがあるのですが、これについてはまた別稿を期したいと思います。

出版社HPから、本書の紹介をあげておきます。

吉原直樹編『防災の社会学 第二版――防災コミュニティの社会設計へ向けて』
(シリーズ・防災を考えるⅠ, 東信堂, 2012年)

3.11の衝撃から新たな防災知/枠組みの構築へ
3.11の大災害は、技術主導の下醸成されてきた安全神話、さらに戦後日本を根底で支えてきた専門知/技術知への信頼を崩壊に導いた。本第二版は、この衝撃的事態の進展を見詰めつつ、災害現場調査等、その後3.11に関してもたらされた知見をベースとした約100頁を初版に加え、これまで看過されてきたローカル・ナレッジの掘り起こしはじめ、新たな地域住民の実践やセーフティーネットの再構築を展望する。

第二版はしがき (吉原直樹)
はじめに (吉原直樹)
序   東日本大震災と「防災の社会学」 (吉原直樹)
第1章 防災の思想 (似田貝香門)
第2章 防災をめぐるローカル・ノレッジ (後藤一蔵)
第3章 防災コミュニティと町内会 (松井克浩)
第4章 都市部町内会における東日本大震災への対応 (庄司知恵子・伊藤嘉高)
第5章 災害ボランティアと支えあいのしくみづくり (西山志保)
第6章 被災者の生活再建の社会過程 (今野裕昭)
第7章 災害弱者の支援と自立 (永井 彰)
第8章 災害支援・防災と情報メディア (柴田邦臣)
第9章 防災ガバナンスの可能性と課題 (吉原直樹)
第10章 防災と地域セキュリティの論理 (菱山宏輔)
補論1:地域資源と防災力──いわき市を事例に (松本行真)
補論2:災害と文化芸術 (笹島秀晃)
補論3:〈災害の社会学〉関連文献解題 (板倉有紀)
むすびにかえて (吉原直樹)

2012年10月12日

新潟大学公開講座

先週土曜日に、新潟大学人文学部・現代社会文化研究科公開講座「震災とコミュニティ」(全7回)の初回を担当しました。内容は下記の通りです。

「震災とコミュニティ:中越から東日本へ」

1.はじめに
2.中越・中越沖地震とコミュニティ
2-1 「山の暮らし」の再生
(1) 旧山古志村の事例
(2) 集落の集団移転―小千谷市十二平地区
2-2 「災害に強い地域」とは
(1)アンケート調査から
(2) 柏崎市松美町の事例
3.東日本大震災とコミュニティ
3-1 津波被災地の苦闘
(1) 宮城県女川町の被害の概要
(2) 「復興」の現状(女川町)
3-2 原発避難の問題
(1) 広域避難者の現状
(2) 避難先でのコミュニティづくり
(3) 「とみおか子ども未来ネットワーク」の試み
4.むすび―「つながり」の再生

受講者の数は少なめでしたが、皆さん熱心に聞いて下さり、質問もたくさん出ました。なかなか難しい質問が多くて、十分に答えられませんでしたが。授業後に近くの喫茶店で、質問の続きをして下さった方もいました。
やや詰め込みすぎの感はありましたが、講座の導入の役割は果たせたかと思います。ご参加いただいた受講生の皆さま、関係者の皆さまに感謝します。

2012年8月22日

陸前高田「女性のつどい」

今週日曜日(8/19)に、岩手県の陸前高田市で行われた「女性のつどい」(陸前高田市地域女性団体協議会主催)にお招きいただき、講演の部の講師を務めさせていただきました。
内容はこんな感じです。

「復興と女性の力―中越から東日本へ」
はじめに
1.見えてきた女性の問題
 1-1 避難所・家族
 1-2 地域社会
 1-3 男性問題?
 1-4 復興過程
2.女性の活躍
 2-1 地域をリードする―北鯖石コミュニティセンター(柏崎市)
 2-2 被災経験の記録と発信―「女たちの震災復興」を推進する会(長岡市)
 2-3 山古志の復興と女性―「民宿たなか」と「多菜田」
3.まとめ
 復興と女性の力/復興への道のり

これまで行ってきた新潟県中越地震と中越沖地震の被災者・被災コミュニティ調査から、ジェンダーや女性に関わる問題を中心にお話ししました。災害時に見えてきた女性の問題がたくさんある一方で、中越の被災地では女性の活躍も目立っており、「復興」には女性の力が不可欠であることを強調しました。また、今回の講演のお話をいただいた後で、あらためて中越の女性の皆さんから陸前高田の女性の皆さんに向けたメッセージを頂戴しました。ビデオを撮らせていただいたものも含めて、それもお伝えしました(この部分がメイン?)。

多くの大切なものを失った人々の前で、何をお話しすればよいのかずいぶん悩みました。元気づけたいと思っても、それが正しいことなのかどうかも分かりません。ただ、遠くからずっと関心と連帯の気持ちを持って見守っている女性たちがたくさんいることを、何とかお伝えできればと思いました。皆さんはもう十分がんばっているのだから、あせらずに、ゆっくりと少しずつ、それぞれのペースで前に進んでください、ということも。

講演の前後の時間、陸前高田の市街地を案内していただきました。ところどころ鉄筋の建物が残っている以外は、夏草に覆われた街の跡が広がっていました。目印が何もないと、自分がどこにいるのか分からなくなります。私の出身地の女川を含め、被災地の沿岸部はどこも似たような風景です。しかし、そこで暮らしていた人びとにとっては、取り替えのきかない「場所」であり続けているはずです。この夏、陸前高田の夏祭りで、以前と同じ順番で山車が町内(の家々の跡)を練り歩いたという話を聞きました。一緒に歩いた人びとの目には、何が映ったのでしょうか。

佐々木会長をはじめ陸前高田の皆さまには、たいへんお世話になりました。また、貴重なお話やメッセージをいただいた、北鯖石コミセンの間島さん、「『女たちの震災復興』を推進する会」の皆さま、山古志の星野さん、五十嵐さんに心より感謝申し上げます。中越防災安全推進機構の稲垣さん、東北大学情報科学研究科の牧野さんには、たくさん「つないで」いただきました。ありがとうございました。

2012年6月11日

「原発避難」を捉える/考える/支える

社会学4学会合同研究・交流集会のラウンドテーブルで、新潟県内の原発避難者の状況について紹介します。

社会学4学会合同の第2回研究・交流集会[福島編]
テーマ 「原発避難」を捉える/考える/支える
主 催 日本社会学会・日本都市社会学会・環境社会学会・地域社会学会
日 時 2012年6月17日(日) 11:00~16:30
場 所 明治学院大学白金キャンパス本館10階大会議室

当日スケジュール
【ラウンドテーブル(11:00~12:30)】
1)黒田由彦(名古屋大学)「名古屋・愛知の避難者」
2)山根純佳(山形大学)「山形県避難者の現状と支援」
3)松井克浩(新潟大学)「新潟県内の原発避難者の構成・変化と支援状況」
4)川副早央里(早稲田大学)「いわき市における原発避難をめぐる状況―被災地での原発避難者受け入れの課題―」
司会:西城戸誠(法政大学)、山本早苗(富士常葉大学)

【研究集会(13:30~16:30)】
1)丹波史紀(福島大学)「福島県における被災者の現状」
2)松薗祐子(淑徳大学)・吉田耕平(首都大学東京)「警戒区域からの避難をめぐる状況―富岡町からの広域避難者調査から―」
3)宝田惇史(東京大学)「原発事故による自主避難の現状と課題―避難者・支援者の調査から―」
討論者:鰺坂学(同志社大学)、西崎伸子(福島大学)
司会:浦野正樹(早稲田大学)、山本薫子(首都大学東京)

2012年4月28日

ある新聞に掲載された原稿のオリジナル・バージョンを載せておきます。中越・中越沖地震の経験をふまえた、東日本大震災被災地への提言というテーマで書いたものです。

東日本大震災の発生から1年が過ぎましたが、被災地がおかれた状況は依然として厳しいままです。たしかに、道路やインフラの復旧は進み、仮設商店街も各地でオープンしました。しかし、仕事の場の確保やこれからの生活の見通しなど、難しい問題が残されたままです。何よりも心配なのは、震災直後の一体感が徐々に薄れ、被災地の内外で格差や気持ちのすれ違いが目立つようになってきていることです。
私が住んでいる新潟県は、2004年の中越地震、2007年の中越沖地震と立て続けに大きな地震災害を経験しました。今回の震災と災害の規模こそ違いますが、都市部ではなく人口減少や高齢化が進む農村・漁村が被災した点など、重なる部分も数多くあります。これまで中越・中越沖地震の被災地で行ってきた調査をもとに、いくつか考えてみることにします。

中越地震から7年以上が過ぎましたが、インタビューをしていると、当時のことを思い出して急に涙を流す被災者の方が今でもおられます。道路や建物がきれいになっても、心の傷が癒やされるまでには長い時間が必要なのです。しかし、だんだんと震災の報道も少なくなり、世間の関心は「次の話題」に移っていきます。中越・中越沖の被災者は、関心の風化や自分たちが忘れ去られることを心配していました。
東日本大震災の被害はあまりにも甚大で、被災者が抱える喪失感は途方もなく大きいと思います。被災地の子どもたちも、困難に耐える大人たちを前にして、わがままも言わず懸命に「いい子」であり続けたでしょう。傷ついたやわらかい心が回復するまでには、長い長い時間を要すると思います。復興とは、簡単には終わらない長く続く過程であることを、私たちは心に刻む必要があります。

そうした復興への道のりを、被災地の外にいる私たちはどのように支えていくことができるのでしょうか。中越地震で大きな被害を受けた旧山古志村には、全国から多くの支援が寄せられました。それは被災地の復旧・復興を推し進め、被災者に勇気を与えるものでしたが、一方的に助けられ続けることに居心地の悪さを感じた人もいました。
そんな時に、ある地元のボランティア団体が、山古志のお母さんたちから郷土料理を教えてもらうイベントを企画したのです。この行事は、参加したお母さんたちにとても喜ばれました。「自分たちにも役に立てることがあるんだ」と。一方的に助けてあげることが支援なのではなく、相手から学び、相手の力を引き出すことが結果的に支援につながるのです。

原発事故の後で福島から新潟に避難してきた人びとを、新潟県民は過去の被災経験も生かして迎え入れました。多くの人が中越地震の「恩返し」をする時が来たと感じ、熱心に避難者を支えたのです。それは同時に、新潟の人びとにとっても、自分たちの被災の傷を癒やすことにつながったのではないでしょうか。
その際にキーワードになったのが、「おもてなしと自立」でした。思いもよらぬ事故の恐怖から着の身着のままで逃げ出してきた人びとを、できるだけあたたかく迎える。しかし、何でも至れり尽くせりにしてしまうと、避難者の自立を損なってしまう。そのバランスを上手にとっていこう、ということです。

重要なのは、被災地・被災者の自立と「誇り」を支える、そしてそれを息長く続けていくことだと思います。具体的には、たとえば地域に根づいた経済活動(地元の商店や町工場、農業・漁業など)や地域で活動する団体を側面・後方からサポートしていくことがあげられます。復興に向けた計画づくりや議論に、被災者自身が中心メンバーとして参加していくことも必要でしょう。また、とかく動きの鈍さが指摘される国は、「現場」の人びとが自由に活動するための条件をできるだけ早く整備していくべきです。

中越・中越沖地震の被災地をみて印象的だったことは、復興には女性の力が重要な鍵を握っているということです。女性がリーダーシップをとれるような地域は、被災時の対応も地域の復興に向けた取り組みもうまくいっているようです。職場を離れると男性はとかく孤立しがちですが、女性は地域の内外にネットワークをもつ人も多く、それを資源として生かしていくことができます。
これから時間がたつにつれて、被災者がバラバラになり、最悪の場合「孤独死」に至ることも心配されています。外からの支援をうまく受け入れつつ、コミュニティを再生させていくためには、女性の「つないでいく力」が不可欠だと思います。

2012年4月6日

『ほんのこべや』

新潟大学生協で発行している書評誌『ほんのこべや』第42号(2012年 春)の「自著を語る」というコーナーに掲載された文章から、一部抜粋して再掲します。

Q:昨年出版された『震災・復興の社会学―2つの「中越」から「東日本」へ』(リベルタ出版)について紹介してください。

この本は、新潟県中越地震と中越沖地震の経験をいくつかの視点から描き出して、記録として後世に伝えることを目的としています。私の専門は社会学なので、「人と人とのつながり」が話の中心になるのですが、それを地域コミュニティやボランティア、ジェンダー、市民活動といった面から取り上げました。
本書のもとになっているのは、被災地で行ってきたインタビュー調査やアンケート調査です。3年間で75人にインタビューし、900人近い人からアンケートに答えてもらいました。地震で被災した人の具体的な「語り」を、できるだけ生かして書いていくように心がけました。人文学部の「社会調査実習」という授業で、学生と一緒に実施した調査の結果も使っています。だから本書には、学生という立場だから聞けたこと、話してもらえたことも含まれていると思います。
本の中では、たとえば、地震で壊滅的な被害を受けた山間地の集落が「地域の絆」を生かして再生に向かっていく歩みをたどったり、「女性の視点」をもとに被災と復興のプロセスを考えたりしました。被災地を調査して見えてきたことは、昔からある町内会などの組織と新しいテーマ型・ネットワーク型のつながりが幾重にも存在している地域は災害に強い、ということです。とりわけ、そこで女性や若者の力をどう生かしていくかに、地域の将来がかかっていると感じました。

Q:本の中では、東日本大震災のことにもふれていますよね。

昨年3月の東日本大震災では、想像を絶するような被害が生じました。とくに福島の原発事故により、新潟県にも多くの人が避難してきました。この本の最後の章では、福島からの避難者を新潟の自治体や民間が、本当に心を込めて受け入れ、支援した様子を取り上げています。その際には、新潟のこれまでの被災経験が、ずいぶんと生かされていました。この時も含めて、本書のもとになった調査の中でとくに感じたことは、「現場」で活動する人びとの心意気や力量の高さ、言葉の重さでした。それは、迷走する政治家や官僚、「原子力村」の人びとの言葉の軽さや無責任さと好対照です。本書では、こんなことも記録しておきたいと思いました。
じつはこの本は、もっと分厚いゴリゴリの専門書として書くつもりでした。準備を進めている最中に東日本大震災が起こってしまい、被災地の惨状を目の当たりにして考えが変わったのです。狭い学者の世界に向けて書くことが、急にむなしくなりました。もっと一般の人にも読んでもらえるものを書きたいと思いました。現地でボランティアでもする方が、よっぽど被災者のためになるのでしょうけど、それでもこうして本をまとめることが「私にできること」なのかなと考えたわけです。
津波で壊滅的な被害を受けた宮城県の女川町というところが私の出身地なのですが、本を書いている時には、がれきに埋め尽くされた町の様子やそこに住む友人・知人のことが頭から離れませんでした。中越・中越沖の2つの地震の経験を、東日本大震災の被災地に伝えることも念頭に置いて、文章を綴っていきました。

Q:災害の研究を始めるきっかけのようなものは、何かありましたか?

災害について調査を始めたのは、2004年の新潟県中越地震の後からです。県内のある団体からの依頼で、被災者のアンケート調査を行ったのがきっかけでした。マスコミの報道でやや一面的な「がまん強い被災者」像が繰り返し伝えられていたのですが、本当はもっといろいろ多様なのでは、と思っていました。実際に、それぞれの条件に応じて様々な「思い」を抱えた被災者の様子を知ることができました。
被災者や被災地の様子をもっと知りたいと思い、地震の翌年からは小千谷や長岡に通ってインタビュー調査を続けました。災害の時に、地域コミュニティは被災者を支える重要な役割を果たすのですが、その反面「見えない拘束力」をもったり、部外者には冷たかったりすることもあります。コミュニティのもつ二つの面をきちんと考えることは社会学にとっても大事な課題だと感じました。中越地震に関する調査研究は、その後『中越地震の記憶』(高志書院、2008年)という本にまとめました。

Q:これからは、どんなことを研究していこうと思っていますか?

災害を社会学的に研究するという「立ち位置」は、微妙なものだと思っています。すぐに被災者の役に立てるようなことは何もできそうにないですし。やっぱりこれからも、具体的な声に耳を澄ませて、ていねいに記録していくことが仕事の中心になるのでしょうね。人間は忘れっぽいものなので、できるだけ経験と記憶を積み重ねていって、それがこれからの災害の備えにつながればと思います。
とりあえず具体的には、福島県からの広域避難者の問題を引き続き扱っていこうと考えています。人災としか言いようのない事故によって、故郷を遠く離れた地で見通しの立たない生活を余儀なくされている人びとを、どうすれば支えていけるのか。これは本当に、前例のない問題です。また、私の故郷の女川町をはじめとする東北沿岸の被災地の復興にかかわる問題にも、いずれは取り組んでみたいと思います。