人文総合演習B 第14回
- 木村敏,1982,『時間と自己』,中公新書
この演習は人文学部の1年生の必修なのですが、今回の報告者はうちでは唯一、他学部から遠征に来ている学生です(工学部1年生)。
報告は、自己も時間も「もの」ではなくて「こと」だという著者の主張を正確に理解・感得したうえで、それをさらに自分になじんだ例で敷衍していくというものでした。たとえば三角関数の記号(sinとかcos)から受けるイメージ、トイレの照明の自動点灯装置におけるCPUの認識のあり方、認識することと自己であるということの違い、さらには自己であることと自己が自己を自己として認識するということの関係、などなど、報告者の見解を呈示するよりも、聞いている各人にそれぞれ考えるべき課題を与えるといった意義をもった報告だったと思います。
私としては、「こと」について論じる際に用いる「ことば」というもの(!)が、「~とは○○である」みたいな、「もの」化的傾向をもつがゆえの、「こと」についての論じにくさ、そして、にもかかわらず、報告者がいうとおり、「ことば」から我々が読み取るのは「もの」ではなくて「こと」なのだという事実、そしてさらに、このメタ的議論をやはり「ことば」でやらなければならないという、まあなんというかこのややこしさをどうしたらいいか、ということを自分なりの課題として受け取りました。
以下、出席者のコメント。