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公開シンポジウム
いまさら、ヨーロッパ
ARS(技術、芸術、科学)の分化と「近代」

新潟大学医歯学総合病院の前に「ARS LONGA」と書かれたマンホールの蓋がある。近くに大きな「ヒポクラテスの木」があり、これは医学の父とされるギリシア人ヒポクラテスが講義をしたとされる親木の種から育てたもの、との説明がある。「ARS LONGA」はヒポクラテスの有名な言葉で「VITA BREVIS」と続く。英語に訳せば、「art is long, life is short」で、以前は、「芸術は長し、人生は短し」と訳されていたが、ヒポクラテスの時代の古代ギリシアでは「ARS」は「芸術」ではなく、「技術」、「実学」の意味で用いられていたので「芸術」と訳すのは誤りで、この言葉は「少年老い易く、学成り難し」の意味、とされる。

九月七日、新潟大学で、「いまさらヨーロッパ―ARS(技術、芸術、科学)の分化と「近代」―」と題したシンポジウムが開かれる。ここでのテーマは、まさにこのARSである。「技術」「実学」として蓄積されてきたさまざまなものが、文系、理系の多くの専門に分化し、そのような知の専門化がヨーロッパの「近代」を成立させる力となった。大学は専門研究の場となり、多くの学部に分かれ、専門家を擁する巨大な研究教育機関になった。二一世紀を迎えた現在、学問と現実、大学と社会、そして大学での専門のあり方はするどく問われている。今、学問の将来、大学の未来を考えるためには、どのようにしてヨーロッパではARSが分化したのか、学問の歴史だけではなく、学問と庶民の生活、学問と職人の技術、学問と芸術など、総合的に再検討しなければならないのではないか、そのような問題意識を持つ、文化人類学、音楽史、建築学、ロシア民俗学、科学史の専門家が、さまざまなテーマで問題提起し、討論する。

今回主催するのは、新潟大学の一九世紀学研究所である。一年半ほど前に発足した研究機関でこれまでさまざまなシンポジウム、講演会を企画してきた。今回のシンポジウムは、文系、理系を横断して議論する貴重な機会である。入場無料でどなたでも参加できるので、ぜひ、多くの市民の方々にもご参加いただければ、と思う。

(松本彰)

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2008年8月22日 15:03に投稿されたエントリーのページです。

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