シス・カンパニー 三人姉妹

 演出のケラが書いた『わが闇』が、チェーホフのこの作品を思わせたし、オーリガを演じている余貴美子は、永井愛の『萩家の三姉妹』で同じく長女(鷹子)を演じていたので、とても楽しみにしていた。が、印象として、ちょっとくっきりとし過ぎたチェーホフだと思った。チェーホフって、もっとそこはかとなく流れているものをキャッチして、他の人は気づかなかったかもしれないけど、私は分かったよと、隠微に楽しむものじゃないだろうか?(笑)
 例えば、冒頭、オーリガがモスクワへの夢を語るところ。後方にチェブトゥイキンとトゥーゼンバフの姿が見え、次に「ばかばかしい」という声が入り、最後、笑い声で、それが否定されるように聞こえる所、3回とも笑い声が(多分、袖から)繰り返されるので、もう見え見え、いや、聞こえ聞こえ。同じように、同じ幕でイリーナとトゥーゼンバフの二人が(主にトゥーゼンバフが)将来の夢を語る時、舞台奥の名の日の祝宴のテーブルから笑いが起こる。もしかしたら、一旦暗くしたのにわざわざ明るくして笑い声を聞かせたかもしれない。ナターシャが登場する直前のところ。ここも意図が見え見えだった。こんな「過剰さ」があちこちにあるのだ。
 例えば、3幕で酔っ払ったチェブトゥイキンが姉妹の母親の形見の時計を壊してしまうところ、これも明かりで強調して、やるぞやるぞという中での大音量。そして、その後、キーンという音と、冴え渡る照明。何度か(おそらくこのシーンよりも前から)これが繰り返された。一般に、効果音も大き目。物が投げられるし(3幕で、ナターシャに怒ってクッションを壁に向かって投げるマーシャ)、床などに物が落ちる音も大きい。
 3幕の冒頭では、確か、アンドレイが舞台上でヴァイオリンを弾くのを最初に見せたと思う。火事の時でも、それに構わず、ヴァイオリンを弾いている性格を強調するために(若干、記憶が曖昧)。そして、この幕の終わり近くでは、オーリガとイリーナに借金のことを語るアンドレイは、衝立を倒すし、動きも派手。4幕でも、フェラポントから受け取った書類をわざわざ音を立てて地面に落とす。
 4幕の最後の姉妹の語り(「働くわ」とか「それが分かったらね」の所)も、また3人を強調した照明になっていた。トゥーゼンバフが殺される銃声もよく聞こえたが、それを告げに来るチェブトゥイキンの姿がイリーナの視界にしっかりと入っていたのは、どうなのだろうか?
 などなど、私の知っているチェーホフとは、随分異なっていたが、もしや、最近はやりのチェーホフの喜劇性を強調する演出の流れに沿ったものなのだろうか? 1幕で、フェドーチクが写真を撮るところ、フラッシュがなかなか光らなかったり、変なタイミングで光ったり、まるでコント的な味付けもなされていた。しかし、まあ、『三人姉妹』は『かもめ』や『桜の園』とは違って、喜劇とは書かれていないのだけど。
 2月28日午後6時半 シアターコクーン
10/03/2015

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