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2012年7月 アーカイブ

2012年7月24日

最後の文コミ卒論構想発表会と、「魅力」という使用を避けるべき語の両義性について

事後報告になってしまいましたが、旧カリキュラムとしては最後の文コミ卒論構想発表会がおこなわれました。当日になって若干の変更もありましたが、プログラムはおおむね以下の通り。

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文化コミュニケーション履修コース
平成24年度 卒業論文構想発表会
7月21日(土)9:30-16:00 @人文社会科学系棟 B226教室

9:30 メディアの中の核兵器
日本における韓流ブーム
10:00 清水玲子論
F.ショパンについて
現代サブカルチャーの形態
ファッション雑誌が提示するイメージと読者の読み方
11:00 ラーメンズにおけるコントの手法
『美少女戦士セーラームーン』からみる戦う美少女アニメ(仮)
木皿泉論
J-POPの歌詞にみる「自分」
12:00-13:00 昼休み
13:00 (未定)
『かもめ食堂』シリーズにおける小林聡美
日本のポピュラー音楽におけるアーティスト像
プロジェクト名に仮託した存在――西川貴教を中心に(仮)
14:00 松竹映画史における山田洋次作品の意義
写真におけるセレブたち
14:30-14:45 休憩
少女小説の変遷 80年代以降のコバルト文庫を中心に
15:00 ニコニコ動画における実況プレイ動画
電子メディアの変遷
1960‐70年代アメリカ映画の「青春」
上橋菜穂子〈守り人〉シリーズ研究
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終わってみて、さあどうであったかというと、別に、最後だからといって特に変わったこともなかったわけですが(名称は変わっても、ほぼ同じことをこれからもつづけていくことになるでしょう)、あえていえば、今年印象に残ったのは、「「魅力」って言うけど、それって、どうよ?」ではじまり、「やっぱり「魅力」系の論文はまずいんじゃない?」で終わったということ、――質疑応答のなかで、しばしば(なかば戯れにではありますが)、論文を書こうとする際の「魅力」という語の危険と魅力がクローズアップされたこと、でしょうか。

ざっくりいうと、「「●●●の魅力を明らかにする」というのは、論文の構想として、間違っているのではないか?」という疑念ですね。

参考文献をいくら読もうと、方法論的、手続き的にどのような工夫をしようと、「●●●の魅力とはなにか」という問いから出発するかぎり、「●●●はすばらしい」という結論(およびその変奏)から外れることはありえない。「魅力」に対する問いを立てるかぎり、「●●●はすばらしい」は暗黙の前提であって、結論ははじめから決まっており、けっして覆されることはない。解答をあらかじめ前提とするような論文が、いい論文になるはずはないのは当然ですね。しかし、ある対象に対する問いが、それがもつ「魅力」からはじまることも、また疑いえない。人は「魅力」を感じないものに向かって、そもそも問いを発しようとはしないからです。対象に魅入られ、対象に誘惑されるということがなければ、なにもはじまらない。

まとめると、

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「魅力」は、論文において、たしかに「使用を避けるべき語」であるが、
「魅力」は、それがなければいかなる思考もはじまらない、必要不可欠の前提でもある。
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ではどうしたらよいか? 

難しいですね。でもそれが「考える」ということなのでしょう。

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