人文総合演習B 第11回
- 井上章一,2008,『日本に古代はあったのか』,角川選書
今日は、一足早く冬休みに入った人が数人いましたね。怪しからん! ただ議論は結構盛り上がりました。
日本に古代はなかった、日本の歴史は最初から中世として始まる、という著者に対して、報告者は真っ向勝負を挑みます。いや、やっぱり日本史は古代から始めるべきだと。報告者の考えは、要するに、支配者の属性の推移によって時代区分をすべきであり、それでいくとやはり武士の擡頭によって中世の始まりとすべきであると。
しかしやはり、なぜ政治体制のあり方を(他の様々な領域における変化を差し置いて)時代区分の基準としなければならないのか、なぜ天皇時代、武士時代等と報告者の主張する時代区分をそのまま時代の名称にするのではなく、古代・中世・近代という西洋史由来の分類を用いなければならないのか、等々の疑問はおさえられませんね。
とはいえ、そういう批判を受けつつ、時代区分というものが、現在の視点から過去に切れ目を入れることで(「その時歴史が動いた!」)、過去の出来事の集まりの中に秩序を見出し(そうやって見出された秩序が「歴史」と呼ばれるわけです)、そうすることで(ある種の)理解が可能になる(ことで別の種類の理解が排除される)という仕組みは、なんとなく感得できたのではないでしょうか。
司会者は、たいへん工夫していましたね。まとめ方もよかったし、鎌倉で採った(刀の原料になる)という砂鉄をもってきてくれたり、楽しめました。あんな大量の砂鉄は初めて見ました(小学校の砂場でU型磁石にくっつけたのしか見たことなかった)。
以下、出席者のコメント。