- 橋本努,『自由に生きるとはどういうことか――戦後日本社会論』,ちくま新書,2007年
今回は10ページの大作でした。内容も、著者の議論の流れに沿いつつも、報告者独自の立場である「自律としての自由」論を基礎に、各段階での自由の観念を批判的に検討していくという、きわめてオーソドックスでありながら、プロの学者でもなかなかきちんとやれている人のいない方法論にのっとった、かなり高水準のものでした。実際、そういう意味では、議論の水準も目標設定も、対象文献を大きく超えていたといってしまっていいでしょう。
また、「本書全体を通しての自由の変遷」を、「実際の現象としての自由/理想としての自由」に分けて再度図式的に整理し直してくれたことで、対象文献を読んだだけでは免れない、なんか分かったような分からんようなもやもや感は一掃されました。
報告者は、(もちろん前提知識なく)カントの自由論と、現代政治・道徳哲学におけるコミュニタリアニズムの自律論に、非常に近い直観的発想を持っていて、まあなんというか素朴にすごなあと思いました(笑)。さらに緻密に議論を展開するために、ぜひこれらの議論をフォローしてみてほしい、と思います。
さて司会者ですが、下記のコメントにもあるように、たいへん素晴らしい司会ぶりを見せてくれました。ネタの振り方、指名のタイミング、想定外の流れになったときの戻し方など、まあその、絶妙というか、私自身あれよりうまくやれと言われてもできるかどうか自信がありません・・・ 司会がうまいと、他の出席者も安心して発言できる・・・というわけで、また私がしゃべりすぎてしまったのが申し訳ないです(笑)。
以下、出席者のコメント。
- 議論を聞いていて改めて自由の定義は1人1人違うんだと思った。
- 本の内容から少し離れて、みんなの「自由」についての考えを聞けて良かったです。
- 現況を受容するタイプの人間なのできつかった。
- 自分の考えを人に説明できるようになります。
- 今までで一番おもしろかった。司会も上手い。報告者もしっかりしゃべってて、いい流れだった。なんとなく納得いく所までいけたんじゃないかな。
- “質問をして話題が発展していく”って展開にしたいのですが、そのような質問がなかなかできません。何度も話をきってしまった気がします。ごめんなさい。次からはがんばります。
- 自由に生きるとは。残念ながら、皆自由について深く考えていないようにも思えた。「自由」という議題は現代日本にそぐわなくなってきているのかも知れないと思いました。
- 報告者の感想 報告者として、ちゃんと質問に答えられなかったところが多々あったなと思います。次の報告のときはリベンジしたいです。あと、ちゃんと今回の演習がスムーズにいったのは司会の○○くんのおかげです。本当に感謝してもしきれないです。
- 司会者の感想 活発な議論を促すことがあまりできなかった。あまり意味のない話題ににしてしまったので、もっと意味のあるような議論にもっていければいいと思った。司会の人は困った時にどの話に、どんな方向に持っていくかとか考えるといいかもしれないと思った。