« 人文総合演習A 第11回 | メイン | 人文総合演習A 第12回 »

柏崎調査09

このところ毎週のように、新潟県中越沖地震の被災地である柏崎市にお邪魔して聞き取り調査を行っています。昨年の暮れに出た『防災の社会学』という本の中で、とりあえずの中間報告を発表したのですが、今年はより詳しいモノグラフを目指した調査を継続中です。主にお話をうかがっているのは、地震の際に被災者の支援を効果的に行うことができたコミュニティや町内会です。いざというときに力を発揮した地域を対象として、災害に強い地域の秘密を探ろうという試みです。

今のところ分かっていることは、「顔の見える関係」が存在する地域は、たとえ特別な備えがなくても災害に強い、ということです。とくに、地域に根を下ろした女性リーダーたちが、この「顔の見える関係」を活かして地域の災害対応を主導していった事実は、私にとってとても興味深いものでした。彼女たちは、長年コミュニティセンターの主事をつとめ、地域の人びとの「顔はほとんど知っている」ということです。こうした知識や人脈を活かしてふだんから数多くのコミュニティ活動を仕掛け、地域を活性化させてきました。2007年夏の中越沖地震への対応は、まさにその延長線上でなされたのです。
さらに、ボランティアとコミュニティの関係も一つのテーマとして取り上げたいと思っています。柏崎市のあるコミュニティでは、県外からの専門ボランティア・経験ボランティアを積極的に受け入れ、彼らは地域の災害復旧に大きな役割を果たしました。とくにコミュニティセンターの中にボランティア・コーディネーターを置いて、現場に近いところで地域のニーズをくみ上げボランティアとのマッチングを行ったのです。その際も地域をよく知るリーダー(こちらは男性ですが)が、さまざまな人びとをつないでいく重要な役割を果たしました。地域の方、ボランティアの方の双方にお話をうかがいながら、ボランティアが地域で機能する条件について考えてみたいと思います。
もう一つ興味を引かれているのは、聞き取りをお願いしている地域の人びとが、さまざまな経験をけっして一過性のものとはしていない、ということです。今回の地震をはじめとして何か大きな出来事があると、地域で議論や学習の場を設けたり、経験を記録に残す作業を繰り返しています。震災のようなネガティブな出来事であっても、それを忘れようと努めるのではなく、この経験が地域にとっての財産になるように知恵を出し合っていることがとても印象的でした。
それにしても、フィールドでいろいろな方のお話を聞いて強く感じることは、信念をもって現場で動いている人の言葉がもつ深さや重さ、輝きです(このように感じるのは、ふだん大学界隈で取り交わされている言葉の空疎さのせいかもしれませんが……)。多くの方々に何度も貴重な時間を割いていただくことは心苦しいのですが、私なりにきちんとした記録を残すことを通じて、少しでも現場にお返しできればと思います。今後ともおつきあいいただけますよう、よろしくお願いします。

カレンダー

<< 2012年12月 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
Powered by
Movable Type 5.2.3