- 長谷部恭男,『憲法と平和を問いなおす』,ちくま新書,2004年
憲法って、小学校から学んでいる割には、その基本的な性質すら、きちんと理解されていることは少ないわけです。立法権力が国民を縛る法律をつくり、その枠内で行政権力が国民に対して権力を行使する。そういう意味で、民主主義というのが国民を拘束するものであるのに対して、憲法は民主主義的に決定され行使される権力作用を拘束するという関係にあること。またそうやって権力を縛る憲法が、単なる書かれた決まりにすぎないのではなく、憲法の文面それ自体よりも大切なもの(人権保障)を実現することを目的とするものであること(立憲主義)。
報告では、そういった基本点をおさえつつ、9条を取り上げて、それが平和主義を謳いながらも、戦争の不在という消極的な定式による国際平和にすぎず、国内の平和を保障するものになっていないことが指摘されました。
これはおもしろい問題提起なんですね。つまり、戦争というのは「国権の発動」なんで、その放棄や武力保持の禁止は、国家権力を縛るという憲法のあり方に合致するわけです。他方で、じゃあ国内の平和を保障しようと思ったら、犯罪を厳しく取り締まるとか、駄目な人間を作らないように、また「○○心」をもった人間を育てるために思想教育を強めるとか、基本的には国家権力による国民の自由の制約の方向に行くわけです。これはちょっと憲法っぽくない。そうしたことを立憲主義の枠内でどう処理すればいいのかというのは、なかなか考えどころだったと思うのですが、提起だけで終わったのは残念でしたね。
報告者には打ち合わせのときから言っていたんですが、報告を作成する際には「粘り強さ」が大事。一つの問題提起から、論理的に導かれる様々な可能性、他の条件を追加することによってさらに派生する様々な可能性、こういったものを一つ一つ検討してつぶしていく粘り強さです。
直観は大切なんですが、直観というのは要するに様々に可能な論理経路群の中の一つにすぎないわけで、他の人も共有しているとは限りませんから、直観だけで進められると(゚д゚)ポカーンてことになりかねません。出発点は直観でいいので、そこから思考の力によって論理的分析を行い、他の人の直観であるかもしれない経路にも触れつつ、そういった可能性のなかでなぜ自分の立場が正しいのかを説得的に示す。こういった議論が粘り強い議論です。報告者は後期がんばると言っているので、後期はそれに期待しましょう。
司会者は、単位にもならないのに司会を買って出てくれてありがたかったです。話題設定等、場を方法論的に支配し、かつたとえば発言者が偏らないように、といった配慮も感じられました。
- 憲法9条についての問題って難しいですね・・・。
- ドラえもんの話が長かった。
- 立憲主義とか民主主義については曖昧なイメージしかなかったので、色々考えられてよかった。
- 短いけどもおもしろいレジュメだ。なにかセンスあるね。議論の方は終始説明になってしまい、議論が進みにくい印象だった。そこが物足りなかった。
- 私を含めて質問と応答のキャッチボールがほぼ出来ていない・・・。質問者も答える人もよく考えながら話さなければいけない。
- 報告者の感想
司会上手すぎて口はさめません。後期がんばろう。 - 司会者の感想 初司会でした。場の流れを操作するのは難しいと思いました。これでいい。