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石田・マンガ アーカイブ

2007年8月23日

懐かしのマンガ2 水野英子『白いトロイカ』

今回は水野英子『白いトロイカ』(1965)です。
前回に引き続き、ロシアものです。
暑いときには涼しいところのものを、です。

18世紀末から19世紀なかばの帝政ロシアを舞台に、
叛乱貴族の娘ロザリンダの数奇な運命が語られます。
「難しいからダメ」と編集部から掲載をしぶられた作品ですが、
その理由は「農奴解放」というテーマにあるようです。
そんなもの、女こどもにはわかるまい、といったところでしょうか。
60年代の少女マンガの位置づけを如実に語るエピソードです。

水野英子(1939-)は少女マンガ界のゴッドマザーともいうべき存在です。
「24年組」の作家たちも水野作品を貪るように読んで育ったとおり、
彼女がいなければ少女マンガの歴史も随分違っていたかもしれません。

水野作品の魅力は、大胆な構図と闊達な描線が語りを牽引するところにあります。
ドレスの襞や巻毛や花びらが、波打ち、うねり、舞う。
こうなると単なる装飾の域をこえ、ドラマの根幹となります。
まさにバロック。
ここで勝手に名づけてしまいますが、水野作品は「バロック・コミック」であります。

2007年8月10日

懐かしのマンガ 山岸凉子『アラベスク』

突然ではありますが、山岸凉子『アラベスク』(1971-1975)です。

今年山岸先生は現在連載中のバレエマンガ『舞姫 テレプシコーラ』で
第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞されました。
その原点ともいうべき作品が『アラベスク』です。

ときは1970年代、場所はソヴィエト。
落ちこぼれバレリーナ、ノンナが、ミロノフ先生(もちろん男前)の指導のもとに
ぐんぐん成長してゆく、スポ根半分、恋愛半分の物語です。
お話じたいは、そう新しいものではありませんが、
とにかく絵が素晴らしい!!

マンガですから絵は動きません。
しかし、跳躍の瞬間なんかは、飛んでるんです(なんか表現がイマイチですね)。
いや、飛びつつ止まってるんです(ちょっとは伝わりますかね)。
そうそう、ピタっとポーズがきまる、その瞬間が描かれているのです。
この絵の直前は動いていたな、と、こちらに想像させるんです。

バレエマンガの傑作は『アラベスク』以外にもたくさんあります
(山岸作品ならほかに『黒鳥 ブラック・スワン』や、有吉京子先生の『SWAN』などなど)。
バレエは少女マンガ的ヴィジュアルと本当に相性がいいんですな。
そういえば、「長い手足に、瞳に星、背中には花」という
いわゆる少女マンガ的デザインを整備した高橋真琴先生も、
バレエマンガが得意でした。

いやはや、素敵ですなぁ〜、といいつつも、我は汗だくの午後であります。

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