- 押村高,2008,『国際正義の論理』,講談社現代新書
今回の報告では、貧困国に対する富裕国の責任、という点に注目して、報告者独自の分析と判断を見せてくれました。報告は、国際関係における貧困の問題は、仮に公正な自由貿易をしたとしても構造的に貧困が放置されるような体制になっていて、そのこと自体が不正であるということに加えて、そのような体制が現在の富裕国による過去の不正の結果であるという洞察に基づき、現在の富裕国は、現在の状況が不正であるがゆえにそれを正す責任を負うだけでなく、過去の不正の清算をするという責任も負う、という二重の責任追及によって、富裕国に根本的な再配分を迫る、というものでした。議論の構成としてはなかなか手が込んでいて面白いので、今後は(?)、この枠組みを具体化する議論を精密に組み立てることが課題になるでしょう。
ところで報告者は独自の正義の基準として「等価交換」を呈示し、それをアニメ『鋼の錬金術師』に由来するものとしていたのですが、不勉強ながらわたくし未見なのでいまいちわかりませんでした。『ガンダム』(ただし富野もののみ)ならわかるんだが(笑)。
何人か書いてますが、司会うまかったですね。あのやり方は今後の人の参考になると思います。
以下、出席者のコメント。
- 等価交換と一言で言っても何かと何かを等しくするのは難しいなと思いました。
- 今回は、言葉のとり違いが多かったですね。それと、参考書の正義の話はまったくなかったのが残念です。
- 司会がすごくうまくまとめられていた。「等価交換」という言葉が金銭的な意味と思っていたが、実際は違っていた。キーワードの表す意味をしっかり捉えるようにしたい。
- また議論をぐだぐだにしてしまった。すいません。司会者は今までで一番すばらしかったです。発表者と司会者さんお疲れ様です。
- 本は読んできたが、内容が難しくて発言ができなかった。
- グローバリゼーションは悪なのか?(個人的には中庸だけど)
- 司会の方とっても上手でした。自分の意見にブレを生じさせないようにする。というか議論中に発言した自分の意見を忘れないで欲しい。
- 昔の借りは返すべきなのかどうか考えるのは難しかったです。
- 世界経済的に、アフリカとかに金をあげていいのかなーと思った。
- 「生命の危機があること」を物資による貧困の定義だと、今、私たちが貧しい、とか思っているのは「真の」(っていうとアレですが)貧困ではないんだなぁ、と思いました。
- 最後に司会者のまとめがあって、すごく良かったです。単に支援するにも、様々な問題があると改めて考えさせられた議論でした。
- 報告者の感想 感じたことをうまく言葉にできないもどかしさを感じました。
- 司会者の感想 いやぁ、司会をナメていました。自分の構想と全然違った感じになるので、これからやる人は心して臨みましょう。