- 大屋雄裕,2007,『自由とは何か――監視社会と「個人」の消滅』,ちくま新書
今回は本が難しかったですね。
さて全体の流れがつかみにくい場合、重要と思われる一つの論点に着目して、それに対する自分の議論を著者の議論に対置する、というのは、報告を作成するための一つの技術です。ただ他の出席者がその論点を特に重視している保証はないので、なかなかリスキーな戦略ではあります。他の話をしたがっている出席者を、むりやり自分の議論の圏域に引き込む、ある種の力技が必要になります。
今回報告者の提題は、その点で少し力が弱かったかなと思います。が、指摘していた点は、哲学的に非常に重要な問題であり、また別の機会に話を聞いてみたいと思いました。類書を読むなどして、さらに考えを深めていくと面白いかと。
相変わらず議論は活発で、90分がすぐ過ぎました。黙っていようと思っているのに、つい口を出してしまうのは私の悪い癖です。次回からは改めよう・・・
以下、出席者のコメント(というか君たち書きすぎw 打ち込むの一仕事ですよ)。
- ・“自由とは何か”という問題は自分で考えてみても難しい問題であったが、さまざまな意見を聞いてとても参考になった。
・監視社会という言葉は今まであまり聞いたことがなかったけど、本を読み、考え、進んでいく監視社会で本当に監視されて配慮された自由・幸福を得ることができるのと疑問に思った。
・レジュメを見て“気持ちと体”についてはとても興味深かった。 - 際限のない「監視社会」を許すのはいいことだろうか? 様々な意見があってしかるべきであると僕は思うのであるが、しかし、人々の「多様な意見」を認めたうえでの「監視」であるならばまだしも、「多数の意見」だけを認めたうえでの「監視」がもつ意味は「恐怖」でしかありえないのではないかと個人的には思うのです。一つの「正義」しか認めないような「社会」は真に「正義」でありましょうか? 僕は一人の「人間」です。「社会」には「大多数」が賛成するからと言って、一人の人間の「自由」をつぶすのが許されるのでしょうか? 僕には拡大解釈が許されるような「監視」であれば、断固反対です。むろん、納得できかねたらですが・・・
- ・先生の「家に監視カメラを設置する」という提案ですが、私は義務ならば設置してもかまわないかなと思います。ですが、どこにその画像が記録されるかがよくわかりませんが、もし自宅に記録が保存されるとしたら、空巣がその記録を盗んだり、ある会社にとって秘密の重要な会話がなされた時の記録が何者かに盗まれたり、新たな犯罪が起こる可能性も捨てきれないとも思います。
・「自由の刑に処されている」という言葉にある通り、誰もが自由である限り責任をもって行動できることが一番理想的であると思います。実現できる可能性は限りなく低いと思いますが、理想に近づけたらいいと思います。
・今回の本はわかりづらくて正直理解できていなかったので、よくレジュメを作ってきたなと思いました。お疲れ様です! - ・監視社会と「自由」の関係は、とても難しい。大義名分上では「生命を守るため」「犯罪を防ぐため」などと多くの事象があるが、実際では「プライバシー問題」「犯罪を起こす権利の侵害」などがある。監視社会はメリットとデメリットの境にあるようなものであると思った。
・自身が「自由」であるためには、生理的な行為、反射的な行為、その他のすべての行為による帰結の責任をすべて取らなければならないのだろうか、と思った。
・今回は本の読みが甘く、あまり議論(レジュメ)を理解できなかった。次回からは気を付ける。 - ・「法の裁き~」 → 論点がずれていたと思う。筆者が言いたいことは日本人の共同体の依存なのでは。
・監視社会を知らない、認知していないことが理想 → 「見られることなく見ること」への恐怖は?
・住宅街→周りで対処/都市→他の協力を得る} ケースバイケース
・どんな論点も必ず右か左かきっぱり判断することができない。
・でもどっちつかずでは論議に参加することができないのがもどかしい。
・カメラで犯罪が全て通報されたら犯罪の自由がなくなる。
・法律の拡大解釈を止めるのが国民なのでは?
・先生がおっしゃるとおり、反射は自由な個人がしたことではないと思う。
・レジュメの文末がほぼ「~いえるのか」「~だろうか」と明確ではないのでどう作者が考えているか分からなかった。これは自分がレジュメを作るときの参考にしたい。 - ・今日は眠くて傍観者になってしまった。全く発言できなかった。精進します。
・「発生してしまった帰結を受け入れるとき~」とあるが、自分では意識していなくても他人に誘導される場合があると思う。その場合、主体的に行動したと言えるのか疑問に思った。反射については自由ではないと思う。監視されることは使用法さえ間違っていなければいいと思うが、その正しい使用法を探すことが一番難しいと思うので、何事もほどほどがいいと考えた。 - ・今日は少しですけど議論に参加できたと思います。自由とは何か!?より、監視カメラの話になっていましたが、皆が監視社会(監視カメラの設置)についてどのように考えているかを聞けたことはとても良かったと思います。
・今回の本は読みながら、自分で理解していくことが出来なかったので、レジュメについての意見を出すことが出来ませんでした。 - とても難しい内容で考えるだけでも大変で、口に出して言葉に出すのはもっと大変でとても疲れた。本を読んでいた時も感じたけれど、自由とは何か、という問に答えは出ない気がした。
- 素晴らしいレジュメでした。特に反論する箇所も見つからず、納得のいく論じ方だったので、自分の発表の参考にしたいと思います。どうもお疲れ様でした。
- 意見の発表のしかたにも、上手、下手があることを実感した。いいたいことがまとまっていなかったり、誰かの意見とかぶっていたりしている人が多かった。意見を出すときは、結論がまとまってから出さなくてはならない。
- テーマがかなり難しかったけど、前よりうまく発言できてよかった。監視社会の是非がメインになったけど、改めて考える事ができた。
- 報告者の感想 とりあえず、終わったことが嬉しいです。ベッドが恋しいです。この授業は自分の考えをまとめることの難しさが学べる授業だと思います。自分の役目は、この先みんなの議論に参加することなので、わかりやすく意見を言えるように考えたいです。
- 司会者の感想 反射や睡眠のように自分の身を守るための本能的な行動は意識してするものではないから自由に選択したかということがよく分からないです。したいことをするのが自由なら、本能的に体が欲したことをするのは自由なんですか?
・昔テレビで見た障害のある人は、意志とは関係なく体が動いてしまう障害をもっていましたが、もしその人の体が勝手に動いて犯罪を犯してしまったらどうなるんでしょうか? 考えれば考えるほど分からなくなる課題でした。