メイン | 2007年9月 »

2007年8月 アーカイブ

2007年8月 3日

祝ブログ開設 ― ゴジラ一番乗り!


Godzilla_Statue_12univ.jpg

ゴジラの銅像(有楽町)


取り敢えず,ゴジラでエントリーしてみます。画像も,こんな感じで貼り付けられます(このサイズは,横370ピクセル)。ブログの投稿画面も,私がいつも使っているものとほぼ同じで,いい感じです。

カテゴリーの設定とか,画面で使うテンプレートとか,いろいろ変えられそうですが,初期設定のままで,投稿しています。どんな風にブログ画面に映りますやら……

この様に自由自在に投稿できますが,文コミとしてまとまりのあるブログに育ててゆくには,結構コツも要りそうですね。尚,自宅からのVPN接続だと,やや不安定です。


テスト

 毎年、この時期は大変忙しいです。オープンキャンパス、勿論、テストやレポートの採点、そして、Gコード科目のラジオドラマ作り、ゼミの演劇の稽古。

 現在、毎日、『罪と罰』の吹き込みをやっています。研究室では「豚野郎」という言葉が流行。

 という具合に、教員個人の、教育研究に関する日記的な所に、学生が書き込めるのがいいと思っています。コメントを。

教員紹介 石田美紀(いしだ みのり)

石田 美紀 (いしだ みのり)

専攻
映像文化論
映画を中心に映像文化を研究しています。
これまでは、イタリアのファシスト政権下に製作された娯楽喜劇映画を中心に研究してきました。
現在は、Jホラー、90年代以降のハリウッド映画に関心をもち、技術と表象の、経済と娯楽の関係を考えています。

・みなさんへ一言
自分のアンテナにひっかかったものは、些細なものでも大事にしてください。
思いもよらないものに変貌するかもしれません。

おすすめの作品
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン
『残存するイメージ―アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間』(人文書院、2005年)

記憶と歴史は、幽霊のようにつかみ所がなくやっかいですが、だからこそ魅力的です。
視覚文化、映像文化を考えるためのヒントがたくさんつまっています。

ロバート・アルトマン『今宵、フィッツジェラルド劇場で』(2006年)

涙なしには観られません。

教員紹介 番場 俊(ばんば さとし)

番場 俊(ばんば さとし)

・専攻
ロシア文学・表象文化論。小説を中心とする言語表現と、絵画や写真などの映像表現について研究しています。身体、メディア、欲望といったあたりがキーワードです。

・みなさんへ一言
大学は良い意味でも悪い意味でも「好い加減」なところです。面倒くさくなってきたらほどほどにさぼってよいし、逆に、勉強したくなったらいくらでも勉強することができます。

・おすすめの作品
自信をもってひとに薦められるものは何かといわれると躊躇してしまいますが、いずれにせよ、どんなジャンルのものであれ、みなさんにはぜひ「偉大な作品」に出会ってほしいと思いますし、自分自身もそう願っています。また、何でもいいですが、大学生のうちに一冊は、はじめからおわりまで外国語で書かれた本を買って、チャレンジしてみてください。

教員紹介 齋藤 陽一(さいとう よういち)

齋藤 陽一(さいとう よういち)

・専攻
ロシア文学・演劇。一番狭い研究領域は、ツルゲーネフとチェーホフというロシアの作家です。そこから派生して、ロシアの文学、そして、日本を中心とする演劇一般の研究をしています。あっ、チェーホフというのはロシアの劇作家(かつ、小説家、それに医師)です。

・みなさんへ一言
「(大学では)面倒くさくなってきたらほどほどにさぼってよい」と書いている先生がいますが、さぼってからまた浮かびあがることができるのは、強い人だけです。「さぼってよい」と思った瞬間に私の堕落が始まり、以来、○○年、堕ち続けてきました。そろそろ復活したいな。

・おすすめの作品
例えば、三谷幸喜のお芝居は非常に面白いです。しかし、時に、面白いだけと感じることがあるかもしれません。井上ひさしのお芝居は非常に面白いです。しかし、時に、政治的な考え方を押しつけているかなと感じることがあるかもしれません。聴いたことないと思いますが、永井愛のお芝居は非常に面白いです。しかし、時に「フェミはいってるな」と感じることがあるかもしれません。そう、「すすめられたけど、面白くなかった」と言われないために、予防線を張りながらすすめてみました。

教員紹介 猪俣 賢司(いのまた けんじ)


MD-81_2007_02univ.jpg

MD-81の翼 新潟へ向けて


猪俣 賢司 (いのまた けんじ)

・専攻
比較詩学,比較文化
ルネサンス詩学と王朝歌学の比較研究や,近世の東西文化交流史がもともとの専門ですが,近年は,映像詩学として,特撮怪獣映画や国策戦記映画を見ています。

・みなさんへ一言
「楽しいことが学問なのだ」と,学生時代に教えられました。冒険心を大いに奮い立たせ,大空へ羽ばたいて下さい。
頭で「考える」のではなく,眼で「見て」,肌で「感じる」ことが大切ですね。感覚を大いに蘇生させて,映像を見てみては。

・おすすめの作品
やはり何と言っても,『ゴジラ』(1954年,東宝)と『モスラ』(1961年,東宝)が,映像の「古今集」だ。


2007年8月 4日

教員紹介 佐々木 充 (ささき みちる)

専攻:シェイクスピア、宮崎アニメ、ユング心理学、都市表象論

佐々木 充(ささき みちる)

・専攻:シェイクスピア、宮崎アニメ、ユング心理学、都市表象論ほか。

シェイクスピアはヨーロッパを代表する劇作家ですが、日本でも盛んに上演されていますね。『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』『リチャード三世』などはおなじみでしょう。今授業でやっているのは、シェイクスピアの魅力が本当は何なのか、映画化されたもの(アルメレイダ監督『ハムレット2000』)を詳しく分析しながら考えるということです。

・皆さんに一言。
普通なら学問の対象として考えられていないものでも(ブランド物、ロック、ゲーム、自販機、オタクなどなど)何でも自分の好きなものを取り上げて、それを掘り下げて考えることができるのが、「文化コミュニケーションコース」のいいところです。お勉強の枠を超えて、本当にものを考えていきましょう。

・おすすめの作品

映画:ゼフィレッリ監督『ロミオとジュリエット』、ロレンス・オリヴィエ監督主演『ハムレット』

教員紹介 三浦 淳(みうら あつし)

三浦 淳(みうら あつし)

・専攻
ドイツ文学。特にハインリヒ・マンとトーマス・マンのマン兄弟が専門です。授業では、グリム童話、近現代思想、知識人論、差別語問題、クラシック音楽評論、貴族社会と格差社会、捕鯨問題など色々なことをやっています。

・みなさんへ一言
自分の専攻を一所懸命勉強すべきであることは言うまでもありませんが、専門以外に何か「これ」という自分ならではの何かを在学中に作っておくといいと思います。たとえば専門はメディア論だけど、それ以外に全国の美術館めぐりをやってみる、とか。
なお、私は自分のHPを持っていますので、興味のある方はのぞいてみて下さい。
http://miura.k-server.org/Default.htm

・おすすめの作品
小説なら、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』。最近、光文社の古典新訳文庫から新しい訳も出たようですし、この際、世界文学の最高峰に挑みましょう。映画なら、古典的なところで『麗しのサブリナ』(ヘプバーン主演の古い方。リメイク版はダメ)、新しいところで『誰も知らない』(是枝裕和監督作品)なんかどうですか。

福沢 栄司(ふくざわ えいじ)

専攻:ドイツ語、大衆文化論
皆さんにjひと言:打ち込めることを見つけよう。
好きなこと、もの、趣味:あまり行けてませんが釣り、料理
おすすめの一冊:吉本隆明『真贋』、あさのあつこ『バッテリー』全5 角川文庫

2007年8月 5日

逸見龍生(へんみたつお)

専攻:フランス文学・フランス思想(ディドロ)
近現代フランス思想史(十八世紀フランス啓蒙主義)
総合文化論(記号論、表象思想論、文化史)
皆さんにひと言:何でもよい、心から好きなものを見つけて、それを若いあいだに掘り下げて。
好きなこと、もの、趣味:海外を旅行すること(仕事を離れてはほとんど難しいけれど)。チュニジアに友達ができたので、いつか北アフリカのその国に行ってみたい。
おすすめの一冊:ランボー『地獄の季節』。20歳になるまえに読んでください。

2007年8月 6日

文コミブログ始動!

文化コミュニケーションコースの教員紹介が揃いました。
講義の情報、日々の雑感など、これから充実させていきたいと思います。

学生のみなさんは思い出せばのぞいてください。
教員のみなさんは引き続き投稿よろしくお願いいたします。

オープンキャンパス真っ盛り

 正確には、今日は、学部学科体験、明日がオープンキャンパスとなっていますが、今年は、展示の担当となりました。あまり、高校生をひきつけられなかったなあ。その一方で、卒論をテーマごとに(映画、演劇、アニメというように)分けて、それぞれ2本ずつ題名が見えるようにおいておいたら、意外なくらい高校生が手にとって真剣に読んでいきました。例えば、「金八先生」なんて書いてあるから、どんな風にそれが卒論になるんだろうなあと興味を持つようです。

 それから意外な出会いがありました。「齋藤先生ですよね?」と言われ、「あっ、声に聞き覚えある」と思って、「もしかして○○さん」とちょっと考えてから言ったら大正解。まだ、情報文化ができる前に、私がヨーロッパ文化にいたころの西洋史専攻の学生、勿論、今は、教員になって、今回、引率者として新大に来ていたのでした。思わず、話し込んでしまいました。

オープンキャンパス真っ盛り(2)

今日の学部学科体験では、高校生1、2年生を対象として、英語以外の外国語の初歩に触れてもらう模擬授業がありました。文コミの教員は外国語も担当している教員が多く、今日も、イタリア語の石田先生、フランス語の逸見先生、ロシア語の番場が出動。フランス語とロシア語はペアだったので、教室は、「ボンジュール!」「ズドラーストヴイチェ!」「サ・ヴァ?」「ハラショー」と、フランス語とロシア語が飛び交う狂乱状態。高校生の皆さんもさぞかし頭が混乱したことでしょうが、みなさん、それなりに楽しそうでした。

外国語フレッシュ体験 朝鮮語・イタリア語の巻

すでに、斎藤先生、番場先生が書かれているとおり
高校生のみなさんが訪れています。
キャンパス上空には気球もあります。

朝鮮語の藤石先生とともに外国語フレッシュ体験を担当しました。
高校生のみなさんは熱心でノリもよく、楽しかったです。
本日の最大の収穫は、ハングル文字の仕組みを知ったことです。

こーなってんのか〜!!

大変勉強になりました。
藤石先生とは両文化の比較や似ている点なんかを話したりして、
あっという間でしたが、充実したひとときでした。

しかし、暑いです。

2007年8月 7日

新潟大学の外国語教育が「特色ある大学教育」に認定されました

新潟大学人文学部が中心になり、文コミからも多くの教員が参加している教育改善の取組「総合大学における外国語教育の新しいモデル――初修外国語カリキュラムの多様化と学士課程一貫教育システムの構築」が、文部科学省の平成19年度「特色ある大学教育支援プログラム」(特色GP)に選定されました。ドイツ語・フランス語、ロシア語、イタリア語といった英語以外の外国語(初修外国語)を、学生の皆さんに、楽しく、また主体的に学んでもらうための試みです。

詳細は、近日中に掲載予定の新潟日報の記事や新潟大学のホームページ、あるいは下記アドレスでどうぞ。

特色ある大学教育支援プログラム、平成19年度審査結果
テーマ1「教育課程の工夫改善を主とする取組」
http://www.tokushoku-gp.jp/sinsa/index.html

オープンキャンパス2日目

 今日は、展示の担当、かつ、高校生の希望者が多いために150人程度の教室で説明をするという役も仰せつかりました。学生に、そのためのイラストも準備してもらい、プレゼンテーションソフトで資料も作成、準備万端のつもりが、午前中に、急ぎでやらなければならない仕事が入り、プレゼンの最終確認をしないままに会場に向かいました。しかも、一度、場所間違えるし。

 そのために、いざ、プレゼンが始まると、「あっ、画像が表示されない!」 理由はすぐに分かりました。画像はUSBメモリに入れてあったのに、メモリさしてない! 血の気が引きました。が、それでも、即興で何とかこなして(高校生の皆さん、すみません)、「文化はコミュニケーションだよ」と言って終えました。

 他にも反省点あるんですよね。まず、電源。「何とか効果」ですでに充電ができない。そのため、コンセントにささなければ起動できないのに、順番が来るまでコンセントにさせなかった。しかも、スイッチを入れてから起動するまでに時間がかかりすぎ。あーあ。文コミ志望者を確実に減らしましたよ(_ _)m。

 次回は、速いパソコンを買って、しかも、電源を毎回使い切ってから充電して、「何とか効果」にそなえよう! それと、最近、複数の仕事を一度にやると水準が落ちるので、やるなら、これだけやるという形で、って、結局、この役割を拒絶しているのか?

2007年8月 8日

アゴラ・カレッジ

そういえば、日程は前後しますが、8月4日(土)には、新潟大学人文学部と新潟南高校の高大連携事業「アゴラ・カレッジ」の一環として、高校生に出前授業をしてきたのでした(@新潟大学駅南キャンパスCLLIC)。文コミからの出講者は齋藤先生と私。私のお題は「J-POPに学ぶ現代文化論入門」。椎名林檎とともさかりえと、そしてなぜか古代ギリシアの哲学者プラトンの『饗宴』に出てくるアリストファネスのエロス論(両性具有の神話)。

どうしてこの二つが結びつくのか、講義をした私ももう忘れてしまいましたが(汗)、今年から南高校以外からの参加者も交え、みなさん真剣に聴いてくれました。

西洋文化研究演習B 録音進行中

 西洋文化研究演習という名前で出している演習、ラジオ・ドラマを作るのがその内容です。今までやったのは、
1999年『石棺』
2000年『ガラスの動物園』
2001年『ラヴ・レターズ』
2002年『アルジャーノンに花束を』
2003年『星の王子さま』
2004年『ロミオとジュリエット』
2005年『夏の夜の夢』(第1期)
2005年『スペードの女王』(第2期)
2006年『るつぼ』
 そして今年が『罪と罰』(多分、この順番だと思うのですが)。2004年に『ロミオとジュリエット』をやったら希望の学生が多く、それならと次の年に二つ出したら、『夏の夜の夢』はそこそこ来たものの、『スペードの女王』は惨敗。それで、ロシアものの今年は不安ではあったのですが、40人来ました。

 現在、担当を決めて脚本にしたものを吹き込んでいるところです。この演習のよいところは、もとが小説の場合、脚本にするために、とにかく読まなくてはいけないということ。えっ? 何がよいのかって? ちょっと教師よりの考えですかね。それでも、今時の大学で、「ラスコーリニコフはさあ」とか「ソーニャはどうのこうの」なんて学生が言っている空間は、ちょっと自慢ですよ。もっとも、多分、全部読まないで脚本を作った学生も(笑)。

 もう一つよいところは、色々な学部の学生が集まるということ。最初の『石棺』は、チェルノブイリのことを扱った脚本で、工学部の原子力の学生さんが来たり、『アルジャーノンに花束を』の時には、「障害児」教育に関心がある学生さんが来たりで、こちらもためになります。

 来年以降、やりたいのは、一番はミヒャエル・エンデの作品。ただ、ファンタジー系は人が大勢来そうで、敬遠したい気持ちもあるんですよね。

コース説明会

人のするなる日記というものを、なんだか分からんがやってみんとするなり。
オープンキャンパスでコース説明を行いしが、前の連中が長々やったため、私のところは時間切れ。というわけで第一回目の説明はせかされてあまりうまく行かず。とりあえず、このブログに載っていた猪さまのゴジラの写真を借用して、それを写しておきました。少し受けたかな。
第二回目は、まともに説明をしていたら、これもなぜか時間切れ。まあしかし、希望的観測では文コミなるものを少しは分かってもらえたかも。

ソフトボール大会文コミチーム優勝

 8月4日に行われた学部長杯争奪ソフトボール大会は、わが文コミチームが優勝しました。トロフィーは合研に飾ってあります。
 参加者は11人で文コミの男子が8人、女子ひとり、教員は斉藤先生と私でした。ふだんのゼミなどではおとなしい男子学生が、この日は大いにその隠れたる力を発揮し、ほかのチームを粉砕しました。佐藤圭君などは、巨人の小笠原並みにバットをぶんぶん振り回し、三振ばかりしていました。まあしかし、男子学生がいつになく輝いて見えた一日でした。
 スポーツはいいですね。こういう機会を作ってやらないと、文コミの男子は女子の勢いに飲まれて教室の隅で小さくなったまま4年間の大学生活を終えてしまうかもしれません。というわけで、今年の秋にでも情報文化の二コース対決のスポーツ大会でもやったらいいんじゃないかと考えているところです。

2007年8月 9日

大学院身体表現論演習 

 大学院の演習では、現在、チェーホフの『三人姉妹』をロシア語で講読中。通して読むのは3回目か4回目、拾い読みは数限りない作品でありながら、「あれ? これどういう意味だっけ?」と辞書に手を伸ばす瞬間があるのが情けないですね。過去に、チェーホフ・ファンの社会人学生とチェーホフの4つの戯曲を1年に1作という感じですべて、1対1で読んだのに、それでも忘れている。(^^); 今回の読み終わりは、11月くらいかな? ○○さん?

 授業というのは、学生のためのものでありながら、一番勉強になるのは、実は、教員です。ラジオ・ドラマ『罪と罰』の話にもどるのですが、第5部の一で、ヒロインのソーニャに援助する意味でお金を渡し、その時に彼女のポケットに密かに別の金まで入れ、第5部の三で、彼女に「金を盗んだ」と言いがかりをつける、ルージンという男がいるのですが、一では、ソーニャのことを正しく、「ソフィヤ・セミョーノヴナ」と呼びながら、三では、「ソフィヤ・イワーノヴナ」と間違えて呼んでいるんですね。最初、学生がそういう風に脚本を書いてきた時に、「これ、間違ってるんじゃないのか?」と調べてみたら、そういう風になってるんですね。念のため原書にあたっても、勿論、そうなっていました。

 一では、レベジャートニコフという人物が、盛んに、ソーニャの名前をルージンとの会話で出してきて、「ソフィヤ・セミョーノヴナ」と繰り返しているためにルージンも覚えていたのに対し、三では、いきなり彼女の名前を呼ばなくてはいけない、しかも、、イワーノヴナになる女性が他に二人もいるために、ルージンは混乱したのでしょう。ドストエフスキイは、そんなルージンのいい加減さを描きたかったのでしょうね。

 本当はどうなのかは、江川卓先生が生きていらしたら、きいてみたいところなのですが...あっ、でも、同僚にドストエフスキイの専門家がいるのでした。今度きいてみようかな。

2007年8月10日

懐かしのマンガ 山岸凉子『アラベスク』

突然ではありますが、山岸凉子『アラベスク』(1971-1975)です。

今年山岸先生は現在連載中のバレエマンガ『舞姫 テレプシコーラ』で
第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞されました。
その原点ともいうべき作品が『アラベスク』です。

ときは1970年代、場所はソヴィエト。
落ちこぼれバレリーナ、ノンナが、ミロノフ先生(もちろん男前)の指導のもとに
ぐんぐん成長してゆく、スポ根半分、恋愛半分の物語です。
お話じたいは、そう新しいものではありませんが、
とにかく絵が素晴らしい!!

マンガですから絵は動きません。
しかし、跳躍の瞬間なんかは、飛んでるんです(なんか表現がイマイチですね)。
いや、飛びつつ止まってるんです(ちょっとは伝わりますかね)。
そうそう、ピタっとポーズがきまる、その瞬間が描かれているのです。
この絵の直前は動いていたな、と、こちらに想像させるんです。

バレエマンガの傑作は『アラベスク』以外にもたくさんあります
(山岸作品ならほかに『黒鳥 ブラック・スワン』や、有吉京子先生の『SWAN』などなど)。
バレエは少女マンガ的ヴィジュアルと本当に相性がいいんですな。
そういえば、「長い手足に、瞳に星、背中には花」という
いわゆる少女マンガ的デザインを整備した高橋真琴先生も、
バレエマンガが得意でした。

いやはや、素敵ですなぁ〜、といいつつも、我は汗だくの午後であります。

2007年8月11日

西洋文化研究演習B 録音ほぼ終了

 『罪と罰』ラジオ・ドラマの録音はほぼ終了。勿論、編集作業が残っているわけですが。

 参加した学生達の間で話題になっていたのが、「『DEATH NOTE』に似てる!」という話。いえいえ、それを言うなら、『DEATH NOTE』が『罪と罰』に似てるんでしょ。ラスコーリニコフの、人類をナポレオンとしらみに分ける理論とライトが犯罪者を殺しても構わないとするところでしょうね。もっとも、私は漫画では読んでいないのですが。

 漫画と言えば、話題となっていたのが、手塚治虫による『罪と罰』の漫画。ラスコルニコフ!もソーニャもかわいい。それから、スビドリガイロフはマルファのところの下男で革命家。それで地主であるマルファを殺して、ラストでは、ラスコルニコフに人民解放戦線の同志になれとせまる。原作でドゥーニャがスヴィドリガイロフに発砲するシーンはスビドリガイロフがラスコルニコフに発砲するシーンに置き換えられていて、その後、スビドリガイロフが「われわれは人民の英雄だ」とうそぶきながら発砲を指揮している街の中、ラスコルニコフは罪を告白する。

 「先生、何でこうなってるんでしょうね?」という学生の問に、私も「何でなんでしょう?」と答えるだけでした。

2007年8月13日

採点進行中

 暑いですね。毎年この時期が第1期の採点期間になるというめぐり合わせ、何とかならないものかと思うんですが。7月を授業期間にしようなどと考えた輩は、太陽の下で汗を流して遊ぶ(決して働くではない)楽しさを知らない人間に違いないといつも思っています。毎年、採点が終わると、もう夏も終わってるんですよね。

 さて、そんな採点期間中、私にとって一服の清涼剤となるのは、レポートの誤字です。さすがにワープロを使うレポートの場合には少なくなりましたが、試験だとまだまだ誤字があります。過去最高に笑ったのは(それでいて、どこかもの悲しくなったのは)、「演劇は誤楽である」と書かれていた答案です。「そうかそうか、演劇は誤った楽しみなのかい」と思ってしまいました。

 こうなったら「ごじから大賞」(誤字力を短くしたもの)を創設して、一番笑わせた者には10点アップとも考えたのですが、最初からそれのみを狙ってくる、(私のような)人間が現れるのではないかと思って止めました。

 

ある大学教師の一日(お盆休み篇)

朝10時、研究室に到着。お盆で人の気配もない。建物の最上階にある南向きの研究室はしっかり温まっていて、ドアを開けた瞬間にうんざり。クーラーと扇風機を全開にし、鬱払いにベートーヴェンのシンフォニーを大音響で鳴らし始めたものの、採点に集中できないのですぐ止める。1時近くなってさて昼食をと思うも、生協はお盆でお休み。舌打ちして炎暑のなかをのろのろコンビニまで歩く。帰ってくると6階のあちこちの研究室の明かりがついているので、それチャンスとばかりに何人かの先生と仕事関係の密談。隣のF沢先生は無精ひげで、いわゆる「ちょいワルおやじ」風、部屋は暑い。エレヴェーターの脇の研究室ではS藤先生がクーラーをがんがんにかけて採点中。もう8月も半ばだというのに、いつまで採点なんかやってんだ。でも、よく考えてみれば自分も同じだね。いくつか密談を済ませた後、目下の鬱の最大の原因である書類書き。どういう運命のいたずらで、文コミ随一の貧乏性が、自分の年収をはるかに上回る予算の算段なんかしなくちゃならないんだろう。ほとほと困り果てたところで事務と打ち合わせ。普段は学生相手に偉そうに論文の書き方などを講釈しているくせに、このときばかりは畏まってダメ出しをうける。研究室に戻って指摘されたところの直し。そうか、いつも学生にこんな思いをさせているんだ、反省、、、とはならず、仕返しに今度また学生をいぢめてやろうと決意(江戸の敵は長崎で)。一通り終わって業務メールを送信すると、ぐったり疲れて大音量で東京事変。ちょっとだけ元気をもらって帰途につく大学教師の夏の夕暮れ。D.C.

(念のためお断りしておきますが、この物語はある程度フィクションです)

2007年8月14日

なおも、採点中

 そんな訳で、もう8月も半ばだというのにクーラーをがんがんにかけて採点中の齋藤です。
 昨日、レポートの誤字のことを書いたのですが、一つ、思い出したんですよ。「因果横暴」 手書きのテストだとすると、そういう4文字熟語があると誤解していることになるから、多分、ワープロで書かれたレポートでしょう。変換ミス。20才そこらで、この境地に達するとは偉い、とほめたかったんですね。因果は容赦ないものだって。

 実は、これ、部屋を片付けていたらメモしてある紙切れが見つかったんですね。よっぽど、残したかったらしい。えっ? 採点で忙しいはずなのに、何で部屋を片付けたのかって? 採点で煮詰まると、ついつい掃除を始めてしまうんですね。

 もっとも、採点で煮詰まらない先生↓もいるらしいけど(この矢印は、多分、近日中に意味を失うでしょう)
 

2007年8月15日

8月15日,敗戦の慚愧 ― 帝国日本の栄光と悲惨


帝国海軍の九六式陸上攻撃機(九六陸攻)は,1937年,支那事変(防衛省防衛研究所の正式名称)に於いて,重慶爆撃を断行した。この未曾有の航空機による戦略爆撃は,マレー沖海戦(1941年)で英国東洋艦隊のプリンス・オブ・ウェールズを撃沈した栄光の記録としても残っているが,米国のB-29戦略爆撃機による東京大空襲,廣島・長崎の原爆投下に至る要因ともなっている。

敗戦が,「終戦記念日」であるとはどういうことか。嘗て,大東亜共榮圏の建設に邁進した南進日本は,円谷英二の撮影した映画『赤道越えて』(1936年)に見られる如く,確かに,敗戦を未だ知らぬ帝国の国民的エネルギーに溢れていたし,『南海の花束』(1942年)には,躍進せる航空日本の夢が描かれている。一方,占領下の日本に於いて,戦勝国の米国は,看板こそ民主主義の名に塗り替えこそすれ,戦前の日本が築いた大東亜共榮圏の基盤を利用したことは既に知られている(『冷戦体制と資本の文化』,岩波講座・近代日本の文化史9)。

「帝国の残映とゴジラ映画―爆撃機の特撮映像論―」(『人文科学研究』,第120輯,2007年)に引き続き,私は今,「南洋群島とインファント島―帝国日本の南洋航空路とモスラの映像詩学―」を次期刊行の紀要論文として書いている。執筆中に,『モスラの精神史』(小野俊太郎著,講談社現代新書)が刊行されてしまったので,それを迂回する形で書かねばならず,これまでにない難儀を強いられているのだが,ゴジラやモスラで論文を書くということは,否応なく,日本の近現代史と向き合うことになる。帝国とは何だったのか,敗戦とは何だったのか,ということを問わずにはいられないのである。東京裁判の再検討(牛村圭『「文明の裁き」をこえて』,中公叢書,2001年)や,南洋の問題(山口誠『グアムと日本人』,岩波新書,2007年)などは,近年,既に提起されている。

8月15日,敗戦の日に何を考えるのか。日本から重慶爆撃を受けた側に立ってみるということと,日本に原爆を投下した側に立ってみるということは,やはり,距離があると言わざるを得ない。日本の栄光と悲惨を,同時に想像してみなくてはならぬ敗戦国は,あらゆる意味で,「慚愧に堪えない」のではあるまいか。海洋国日本が嘗て抱いた大東亜共榮圏は,形こそ変え,しかし,今も残映として消滅してはいないことも確かなのである。


2007年8月16日

表象文化基礎論A 未だ終戦にいたらず

 終戦の日(と慣例に従って記述します)を越えても、採点戦線はいまだ終わらないです。しかし、明日、強制的に終戦となるので、心配はいらない...でしょう。

 表象文化基礎論Aの課題では、現代日本(一応、終戦から今まで)の家族を描いている作品を取り上げて論評することになっているのですが、人気作品は映画の『ALWAYS 三丁目の夕日』と小説で瀬尾まい子の『幸福な食卓』でした。なるほどと感じるか、「へー」と思うか、色々でしょうが、男女でも傾向がありそうです。ちなみに、この2作品の場合は特にそうでしたが。

2007年8月17日

採点戦線終戦

 締め切り5分前に終了。いつもながら悔いが残る。

 強気の人は、「学生ども、何で、理解できないんだ」と思うのだろうが、私は、「うまく教えられなかったなあ」 ひどい時には、「あっ、こんなことを教えたんだ」と思う。

 いずれにせよ、やれやれです。って、こういう「である調」と「です調」の混交はチェックしているのですがね。

2007年8月20日

授業改善

 ようやく、夏休みを迎えた訳ですが(土日は何となくぶらぶら過ごしていました)、もう、第2学期のことを考えなくてはなりません。

 番場先生が書いておられたように、新潟大学では語学教育の改善が進んでいます。ロシア語についても、2学期に備えて、所謂、「コンテンツ」を整備しようと思っています。一応、ネット上に単語の問題や、動詞の活用の問題を公開しているのですが、年度ごとの対応になっているため、これを教科書別にまとめなくてはいけないなあと考えています。それ以外にも、前置詞の問題であるとか、会話の例とか、テーマ別にまとめられるといいなあと思っています。さらに、携帯でアクセスできる三択問題とか、アイディアはあるんですけどね、ただ、色々公開すると、今度はセキュリティに神経質にならなければいけません。うまく役割を分担できるといいなあと考える今日この頃です。

2007年8月21日

携帯用コンテンツ

 この話題は、文コミというよりは、外国語に関するものです。どういう訳か、文コミには外国語教育に熱心な方が多くて、私も、後塵を拝するという感じですが、それなりに工夫をしようとアクセス、じゃなかった、あくせくしている訳です。

 さて、今回、やろうと思っているのは、携帯から見ることができる語学学習用のサイト作りです。きっと、htmlの簡易版なんだろうと思って「さ、さ、さー」とやろうと思ったのですが、auの方を除いたら、htmlならぬ、HDML(だったと思うのです)というのが出てきて、早速壁に突き当たりました。それで、気分転換にソフトバンクの方をのぞいたのですが、こちらは、なじみのhtmlが出てきて、一安心、安心したので、今日はこれでいいかなと終わりにしました。

 という訳で、結局、成果0ですね。そして、気がついたのは、3通り作ったとして、自分ではすべてを確認することはできないなあということです。協力者、求む。ロシア語を学習していて、携帯を持っていて、ネットが好きな人でしょうか。

2007年8月23日

文コミ演習芝居始動

 まだまだ夏休み気分が抜けませんが...って、まだ夏休みですね。よかった。
 毎年恒例の、しかし、休み中にこっそりやっているという感じもあるので、あまり知られていない、文コミ齋藤ゼミの演劇公演の稽古が、今日から始まります。しかし...皆、まだ、夏休み気分だから(って、まだ夏休みだって)、集まりは悪そうです。読み合わせ、それも、代役やら、一人何役もで行う読み合わせで終わりそうな予感。

 尚、公演は、9月29日、30日です。詳細は、またお知らせします。

懐かしのマンガ2 水野英子『白いトロイカ』

今回は水野英子『白いトロイカ』(1965)です。
前回に引き続き、ロシアものです。
暑いときには涼しいところのものを、です。

18世紀末から19世紀なかばの帝政ロシアを舞台に、
叛乱貴族の娘ロザリンダの数奇な運命が語られます。
「難しいからダメ」と編集部から掲載をしぶられた作品ですが、
その理由は「農奴解放」というテーマにあるようです。
そんなもの、女こどもにはわかるまい、といったところでしょうか。
60年代の少女マンガの位置づけを如実に語るエピソードです。

水野英子(1939-)は少女マンガ界のゴッドマザーともいうべき存在です。
「24年組」の作家たちも水野作品を貪るように読んで育ったとおり、
彼女がいなければ少女マンガの歴史も随分違っていたかもしれません。

水野作品の魅力は、大胆な構図と闊達な描線が語りを牽引するところにあります。
ドレスの襞や巻毛や花びらが、波打ち、うねり、舞う。
こうなると単なる装飾の域をこえ、ドラマの根幹となります。
まさにバロック。
ここで勝手に名づけてしまいますが、水野作品は「バロック・コミック」であります。

情報文化研究法

締切を60時間以上過ぎて、やっと成績を提出したBです。懸案であった文科省提出の書類もひとまず終えて、やっと少し人間らしい生活が戻ってきました。そこで、このブログを見てくださる高校生のみなさんのために、1学期にやった授業の紹介でも。

人文学部の情報文化課程に入学した学生は、2年次に「情報文化研究法」という準・必修の授業を受けることになります。50人余りの学生を、文コミ教員2名が2クラスで担当(今年度はF沢先生と私)。内容は、二年後に控えた卒業論文の予行練習ともいうべきもので、学生一人一人が自ら論文テーマを決め、資料を収集し、章立てを考え、一人一人に決められるアドバイザー教員の指導をうけつつ、正式な学位論文の形式にのっとった論文を完成させるという、なかなかハードなもの。9年前からつづいている名物授業です。

情報文化課程の学生の所属履修コース(情報メディア論履修コースと文化コミュニケーション履修コース)が3年次に決定する前の2年次向けの授業ですので、文コミのコース紹介ブログの内容としては必ずしもふさわしくはないかもしれませんが、文コミ、あるいは広く情報文化課程の教育・研究内容の拡がりを如実に表すものとして、以下に私が担当したクラスで提出された論文のタイトルを掲げておきます。映画から「メガネ男子」まで、あるいは缶コーヒーから文学まで、日本のもの、アメリカのもの、韓国のもの、いろいろですね。論文を書く学生の苦労はもちろんですが、これほど広範なテーマにつきあわなければならない教員も大変です。出来上がりの水準も、高校生の読書感想文に毛が生えた程度のものから、こちらが思わず唸ってしまうハイ・レベルのものまで、さまざま。文コミ(情報)の学生は、こうして、徐々に各自の研究テーマを見定めていくことになります。


カラオケの秘密
娯楽作品に見られる残酷表現
ケータイ小説に引き込まれる若者
トーク・トゥー・ハー論
歌詞に託されたもの――歌詞から読み取れるスピッツの魅力
LOVE PSYCHEDELICOを通してみる日英混交詞
スポーツライター金子達仁の愛国心に基づく独特の世界観
モデル論
「モノ」に命を吹き込むこと――ディールロヴァーにみる人形アニメーション
東方神起の韓国語楽曲――その独自性と魅力
映画「ドラえもん」論――漫画版の描かれ方との比較
ブランド論
色から見る映画――映画『ゆれる』の赤
トトロが意味するものは何か
コーヒーの多様なイメージ
メディアイベントとしての甲子園
「CanCam」から見る現代の虚像崇拝
“屋上”から見る松本大洋の解放性
日本における眼鏡観変化――メガネ男子現象の背景
ハウルの動く城――ハウルとカルシファー
ヴィジュアル系とは何か
なぜ女性はダイエットをするのか
茶飲料の多様性と位置づけ
コミュニティ放送について――メディアがつくるコミュニティ
作品におけるエドヴァルド・ムンクの考察
ウディ・アレンの神なき現実とつくりごと

2007年8月24日

大人のための「ローマの休日」講義

 元新潟大学助教授(文コミ)の北野圭介氏より『大人のための「ローマの休日」講義』を頂きました。まあ、いつものように、まずはあとがきから目を通した訳ですが、日頃、同僚の間で、或いは、授業中の余談として語っていたことが、かなり美化して?書かれていました。

 それと同時に、長いので後ろだけ書くと「マニュアルを兼ねた文献案内」というのが付いていて、これがなかなか映画研究を知るには役に立ちそうでした。勿論、私は映画研究者でないので、簡単に流れを知るには役に立ったということなのですが。

 さらに、理論的な著作が来年出版されるとのこと。ある出版社のホームページで連載をしているということは、文コミの学生から聞いて知っていたのですが、それが本になるらしいです。こちらも楽しみです。

2007年8月27日

文コミ演習 芝居公演その2

 第2回目は、脚本の検討をさらに続けています。書き忘れたかもしれませんが、毎年、ゼミの参加学生が書いたオリジナル脚本を使って公演しています。文章では気付かないけど、実際に喋ってみると不自然であったりするところを変更していきます。また、書いた人の頭の中では理解できていても、読んだだけでは分からなかったり、或いは、読んだら分かるけれども、一度聞くだけの観客には理解できないだろうという所も直します。

 そして、「こっちの方が面白くない?」というところも積極的に。まあ、作品の趣旨が変わる時にはやりませんが。でも、お客さんが飽きないためには大事。

 ところで、今日は、「みそのとしょうが...」という台詞、私は、「みそとしょうゆが...」と読めてしまって、学生流の言い方だと、「ツボ」でした。「みその」というのと「しょう」というのは登場人物の名前です。

2007年8月30日

文コミ演習 芝居公演その3

 今日で、一応、役者が一度は稽古に来たという状態になりました。えっ、それでいいの?という声もあるでしょうが。

 ゼミ生の脚本で公演をすると、台詞の一つ一つについて考えて、「こっちの方がいい」とか「この登場人物のキャラクターなら、こういうことは言わない」とかという意見が出てくるのが面白いですね。既成の脚本だと、勿論、たいていの作家が公演許可を出すときに、「台詞の改変禁止」と言ってくるので、仕方ないのですが、「ここ、何で、こういう台詞になっているんだろう」という議論の仕方になる訳で、そこが大きく違います。

 「この台詞、こことつなげたくて入ってるんだね」というのが透けて見えることもあるんですが、なかなか、深く考えてあるところもありで、それに気付いた役者が披露すると、気付いていなかった残りの役者が感心するという瞬間もあります。ありましたよね?>関係者

2007年8月31日

過ぎ行く夏の翻訳論

あまり知られていないことですが、文コミでは文学の教育研究も盛んです。さらに知られていないことですが、マイナーなはずのロシア文学研究者が、なぜか二人もいます。そして誰も知らないことですが、そのうちの一人はドストエフスキーを研究しています。私のことですが。

最近、出版界では、なぜか古典の新訳が盛んです。理由はよく分かりませんし、とりたてて騒ぐようなことではないと思うのですが、それでもやっぱりちらちらと覗いてみると興味深いところもあります。一例として、知る人ぞ知るドストエフスキーの傑作(?)『地下室の手記』(1864年)の冒頭を見てみましょう。順に、これまで新潮文庫などでおなじみであった江川先生の訳、光文社古典新訳文庫の一冊として今年の5月に出たばかりの安岡先生の新訳、クラシックなガーネットの英訳、そして原文です。

1) ぼくは病んだ人間だ……ぼくは意地の悪い人間だ。およそ人好きのしない男だ。ぼくの考えでは、これは肝臓が悪いのだと思う。(江川卓訳)

2) 俺は病んでいる……。ねじけた根性の男だ。人好きがしない男だ。どうやら肝臓を痛めているらしい。(安岡治子訳)

3) I AM A SICK MAN.... I am a spiteful man. I am an unattractive man. I believe my liver is diseased. (trans. Constance Garnett)

4) Я человек больной... Я злой человек. Непривлекательный я человек. Я думаю, что у меня болит печень.

それぞれ微妙な違いと苦心が見られますよね。原文では主語の代名詞"Я"、それに「人間」とか「男」にあたる"человек"という語が三回繰り返されていますが、英訳はそのまんま"I", "man"と繰り返し、江川訳は「ぼく→ぼく→省略」「人間→人間→男」と変え、安岡訳は「俺→省略→省略」「省略→男→男」としています。さらに原文では冒頭の文は「主語+名詞+形容詞」、2番目の文は「主語+形容詞+名詞」と語順が変わっていて、3番目になると「形容詞+主語+名詞」という奇天烈な語順になっています(ちなみに現代ロシア語では2番目の語順が一番普通)。当然ニュアンスの微妙な違いが出てくるわけですが(うまく説明できないけれど)、英訳はそれをすぱっと切り捨て、日本語訳二種はなんとか表現しようと頑張っています(苦しげですが)。

ところがこの箇所に関しては、とんでもなく斬新な解釈が存在しています。日本を代表するドストエフスキー研究者で、私がもっとも敬愛する一人、中村健之介先生によるものです。全体の翻訳を出されているわけではないので、この部分の訳を含む研究書の一節を引用することになりますが、要するに、これは漫談だというのです。

5) その最初の断章「地下室」で私たちは、いわばこの手記者の独演をうんざりするほど楽しむことになる。ドストエフスキーの書くものは初期の短篇でも後期の長篇でもおかしくて思わず笑ってしまう個所が多いのだが、『地下室の手記』(一八六四年)のいやらしくて滑稽な、それでいて赤くむけた傷に風があたってひりひりするような痛さもあるお喋りの面白さはまた格別である。これは全篇がいわば様々な色あいの笑いをかもし出す酵母のかたまりだと言ってよいだろう。
 「地下室」の男はのっけから「わたしはねえ、病気持ちなんですよ……腹黒い男なんです。魅力ってものの無い奴なんですよ。肝臓がわるいんだと思うんです」と、お役をつとめる太鼓持ちよろしくギャグをとばし続け、はあはあ息を切らしている。(中村健之介『ドストエフスキー・作家の誕生』みすず書房、1979年、220頁)

どうです? ちょっと面白いでしょう。ちなみにおまえはどう思うんだ、と言われると、中村訳に驚き、最大限の賛辞を惜しまないものの、選ぶとなるとだいたい江川訳あたりで落ちつくかな、といったところです。なぜか? これが「手記」(ロシア語原文ではЗаписки、英訳ではnotes)だからです。これで分かります?

About 2007年8月

2007年8月にブログ「文化コミュニケーション 公式ブログ」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

次のアーカイブは2007年9月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type 5.2.3