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2010年12月12日

第7回新潟哲学思想セミナー終了。 【イベントの記録】

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第7回セミナーでは、講師に南山大学の大竹弘二先生をお迎えし、「カール・シュミットのアクチュアリティ――近代主権国家の歴史的使命とその終焉」というテーマのもとお話しいただきました。当日は、悪天候にもかかわらず約二十名の方が足を運んでくださいました。

大竹先生は、ご自身の『正戦と内戦──カール・シュミットの国際秩序思想』の内容を踏まえた上で、シュミットの考える「近代主権国家概念の誕生と没落」についてお話しされました。

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シュミットによれば、近代主権国家は、16世紀の宗教戦争を克服する使命を負って生まれ、したがって歴史的・地域的にヨーロッパに固有のものという性格をもっていました。しかし19世紀後半以降、主権国家概念が全世界に広まり、その固有性を失い没落していきます。その背景には、ホッブズの政治的自由主義という近代国家概念に内在する要因と、イギリスによる海洋進出という外在的要因がありました。そうしてもたらされた産業・技術が、主権国家にとっての新たな課題になっていきます。

シュミットは、一方でマキァヴェッリらの唱える技術的国家観の無規範性を批判しながら、他方で評価してもいました。そこから着想を得、彼は例外状況における行政府の「措置(Maßnahme)」に規範性を与えた上で法律に優先させるという主張を展開するに至ります。しかし、戦後の経済発達に伴い行政措置の対象が「生存配慮」へと変わったために、シュミットの技術国家への見方は再び否定的なものになっていった、と大竹先生は考えていらっしゃいます。

講演の後は、多くの教員・学生から、それぞれの研究分野に関連した質問が出され、議論に幅のある質疑応答が行われました。

大竹先生は、シュミットの思想の変遷を、歴史的状況を踏まえてわかりやすく説明してくださったので、シュミットの思想が、行政機能がますます肥大化する現代政治に対する鋭い批判になりうるということを理解することができました。あらためて、大竹先生ありがとうございました。

[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程・保坂 希美]