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2011年4月20日

第8回新潟哲学思想セミナーが開催されました 【NiiPhiS】

8th_NiiPhiS

第8回の新潟哲学思想セミナーでは、講師に山形大学の清塚邦彦先生をお迎えし、「フィクションとは何か:フィクションと現実という対比について」というテーマでお話しいただいたあと、新潟大学の井山弘幸先より「お笑いにおけるリアルとは何か」についてお話しいただきました。セミナーには30名ほどの参加者があり、多くの学生や教員のほか、3年前に新潟大学を退官された佐藤徹郎先生もお越しくださいました。

清塚邦彦氏

清塚先生は、まず最初に、ご自身の著書『フィクションの哲学』のおおよその内容について紹介されました。清塚先生は、フィクションをひとまず「想像による物語」として捉えて、その基本的な特徴を「作者と語り手の不一致」という点に求めておられます。その上で清塚先生は、フィクションにも現実と符合するものがあったり、フィクションではない語りのなかにも実在しない対象や出来事に言及することがあるなど、フィクションと現実の違いについて、あらためて捉えなおされます。そして、フィクションはリアリティの対義語ではなく、むしろリアルなフィクションがあると清塚先生は仰い、その特徴について分析的に議論を展開されました。

井山弘幸氏

つぎに井山先生が、笑いにおけるフィクションとリアリティについて、落語や漫才から豊富な例をとりあげて、お話しくださいました。落語とはフィクションのなかで人間の業を肯定するものであるという立川談志のテーゼをめぐって、さらには漫才というフィクションにおいて、わざと漫才師が現実世界のことを話して笑いをとる、いわゆる「リアルぼけ」の方法をめぐって、落語や漫才ではリアリティとフィクションの関係がとても重要になることをお話しいただきました。

その後の質疑応答の時間では、特に清塚先生と新潟大学の先生方との間に、ふだんは見られることのない、白熱した議論が行われました。

今回はお二人の先生による講演でしたが、フィクションとリアリティという、いっけん相反する概念についてさまざまな議論が交わされ、あらためてその関係を考えなおすことができました。清塚先生ならびに井山先生、ありがとうございました。

[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科生 中川 祐樹]