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2013年4月22日

自己紹介 【江畑 冬生】 【言語学】

江畑冬生(えばたふゆき)です.専門は言語学です.


 言語学という分野について,その単純なネーミングの割には,実際に何を研究しているのか良く知られているわけではないようです.およそ言語に関する研究は何であっても言語学と呼びうるわけですが,言語学の究極の目標は,世界の諸言語の仕組みと働きを明らかにし,人間言語とは何かを考えることです.


 言語は我々にとってあまりに身近すぎるので,改めて客観的に考察することは容易ではありません.まず,言語は物ではないので,実際に手にとって調べるわけにはいきません.そこで,人間の言語活動を観察することになります.人は,意思を直接相手に伝えるのではなく,言語を手段として伝達を行います.この時,物理的には音声が用いられます.音声が対話者の耳に入り,意味として理解されたときにはじめて,伝達が成立します.発した瞬間に消えてしまう「音声」と,客観的に捉える事が難しい「意味」.言語学では,この一種つかみどころのない音声と意味をなんとか科学的に解明しようと,もがいてきました.その成果は「文法」と呼ばれたりもします.


 ひとくちに言語学と言ってもいろいろのアプローチがありますが,私が主として行っているのは,記述言語学や言語類型論と呼ばれる分野です.「正しい言葉づかい」を決めるのが言語学だ,という誤解がありますが,記述言語学の態度は真逆で,むしろ実際の言語使用を客観的に観察することでその背後にある法則性を導き出そうとするものです.世界の言語の数は,6,000とも8,000とも言われています.それら諸言語の構造を解明しながら,人間言語の多様性と普遍性を明らかにするのが言語類型論です.


 私は2000年以降,サハ語というシベリアの少数民族の言語の文法構造についての研究を行ってきました.サハ語の話者数は約45万人で,そのほとんどがロシア語とのバイリンガルです.サハの人々の顔つきはなんとなく日本人に似ていて,言語構造にも類似が見られます.はじめてシベリアを訪れる際,新潟空港からハバロフスクへ飛びました(これがはじめての海外でした).以降,毎年のように新潟空港を利用していましたが,このたび教員として新潟大学に勤めることになったのも縁ですね.


 ところで人間学のフロアには「言語学実験室」という部屋があります.この部屋には,言語と言語学に関する新旧・和洋の良書がたくさん収められています.先任の山崎幸雄先生,福田一雄先生,あるいはそのさらに前の先生方が収集・管理なさってきた貴重な財産です.これをちゃんと生かすのも私たちの使命ですね.一緒に言語学を盛り上げていきましょう.