このたび城戸淳著『理性の深淵──カント超越論的弁証論の研究』(知泉書館、2014年)が新潟大学人文学部研究叢書10として刊行されました(ISBN 978-4-86285-181-9、xviii+292+44頁、6000円+税)。長年にわたるカント『純粋理性批判』の超越論的弁証論にかかわる研究を同題の博士論文(東北大学、2013年)として集成したのに続き、これに若干の補訂を加えて叢書の一冊に加えていただきました。以下に細目次を紹介します。
『理性の深淵──カント超越論的弁証論の研究』目次
凡例
略号表
序 論
1 超越論的弁証論における理性の深淵
2 方法と課題
第一章 「取り違え」概念の展開──発展史の一断面
1 取り違えの形而上学的誤謬──『就職論文』
2 取り違えの二つの型と新たな還元──一七七〇年代
3 感性論における取り違えモデルの展開
4 観念論と空間──第四誤謬推理
5 弁証論における超越論的取り違え
6 超越論的観念論のゆくえ
第二章 超越論的弁証論と理性──沈黙の十年間
1 対立と懐疑──一七七二年ヘルツ宛書簡とその周辺
2 超越論的演繹と統覚──デュースブルク遺稿とその周辺
3 規則対立から理性推理へ──超越論的弁証論の形成
4 「理性」概念の成立
5 「原理の能力」としての理性
おわりに──『純粋理性批判』へ
第三章 理性批判と自己意識──誤謬推理論の改稿をめぐって
1 「私は考える」と統覚──第一版の誤謬推理論(1)
2 カテゴリーの超越論的対象──第一版の誤謬推理論(2)
3 論理的機能における自己意識──第二版の誤謬推理論(1)
4 自己意識の総合モデル──第二版の演繹論
5 統制的理念としての私──第二版の誤謬推理論(2)
第四章 人格と時間──第三誤謬推理のコンテクスト
1 第三誤謬推理
2 合理的心理学の「人格」概念
3 疑似記憶と時間の超越論的実在性
4 ロックとカント──超越論的な思考の系譜
おわりに──私の魂の両極的な本性について
第五章 カントのCogito ergo sum解釈
1 超越論的主観の現実性──第一版の誤謬推理論まで
2 叡知者と現象──演繹論の二分法
3 「ある現存在の感情」──『プロレゴメナ』
4 経験的命題としての「私は考える」──第二版の誤謬推理論(1)
5 「未規定的な経験的直観」──第二版の誤謬推理論(2)
おわりに 108
第六章 流れさった無限と世界の起源──第一アンチノミー
1 無限のヤヌス的な本性──定立の証明
2 流れさった無限──証明の問題史(1)
3 永遠から──証明の問題史(2)
4 空虚な時間──反定立の証明
5 起源への問い
6 批判的解決──超越論的観念論へ
第七章 無限と崇高
1 形而上学的無限と数学的無限
2 無限性の超越論的概念
3 与えられた無限量としての空間・時間
4 崇高──『判断力批判』の無限論
5 無際限への遡源
第八章 人間的自由の宇宙論的本質について──第三アンチノミー
1 定立・反定立の証明と註解
2 二性格説による解決とその問題点
3 第三アンチノミー解決の宇宙論的=神学的な背景
4 性格を選択する叡知的な行ない
5 パースペクティヴの実践的転回
6 宇宙論的自由と超越論的観念論
おわりに
第九章 存在の深淵へ──神の現存在の宇宙論的証明
1 人間理性の自然な歩み
2 宇宙論的証明
3 弁証論的理性の転回
4 宇宙論から存在論へ
5 超越論的実在論──汎通的規定としての実存在
6 存在論的ユートピアの解体──必然性をめぐって
おわりに──「人間理性にとっての真の深淵」
結 語
1 超越論的弁証論の位置と意義
2 理性批判と超越論的観念論
あとがき
註
索引