人文総合演習A 第5回
- 橋本努,『自由に生きるとはどういうことか――戦後日本社会論』,ちくま新書,2007年
今回は10ページの大作でした。内容も、著者の議論の流れに沿いつつも、報告者独自の立場である「自律としての自由」論を基礎に、各段階での自由の観念を批判的に検討していくという、きわめてオーソドックスでありながら、プロの学者でもなかなかきちんとやれている人のいない方法論にのっとった、かなり高水準のものでした。実際、そういう意味では、議論の水準も目標設定も、対象文献を大きく超えていたといってしまっていいでしょう。
また、「本書全体を通しての自由の変遷」を、「実際の現象としての自由/理想としての自由」に分けて再度図式的に整理し直してくれたことで、対象文献を読んだだけでは免れない、なんか分かったような分からんようなもやもや感は一掃されました。
報告者は、(もちろん前提知識なく)カントの自由論と、現代政治・道徳哲学におけるコミュニタリアニズムの自律論に、非常に近い直観的発想を持っていて、まあなんというか素朴にすごなあと思いました(笑)。さらに緻密に議論を展開するために、ぜひこれらの議論をフォローしてみてほしい、と思います。
さて司会者ですが、下記のコメントにもあるように、たいへん素晴らしい司会ぶりを見せてくれました。ネタの振り方、指名のタイミング、想定外の流れになったときの戻し方など、まあその、絶妙というか、私自身あれよりうまくやれと言われてもできるかどうか自信がありません・・・ 司会がうまいと、他の出席者も安心して発言できる・・・というわけで、また私がしゃべりすぎてしまったのが申し訳ないです(笑)。
以下、出席者のコメント。