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言語学 アーカイブ


2018年3月 8日

講演会:シベリアでの少数民族言語調査  【言語学】

3月8日(木)に,講演会「シベリアでの少数民族言語調査」を開催しました.講演会では言語が話されている現場での言語調査の実際について,2人の専門家の経験に基づく事例が紹介されました.なお本講演会は科研費 若手研究(A)「北東ユーラシアチュルク系諸言語の研究: 分岐と接触の歴史的過程の解明」(研究代表者:江畑冬生)によるものであり,新潟大学 人文社会・教育科学系附置「言語学研究・言語教育センター」による活動の一環です.

プログラム

14:00-14:30 

Linguistic fieldwork: Introduction and cases from NE Asia (in Japanese)   Fuyuki EBATA (Niigata University)  

「フィールドワークによる言語調査:北東アジアの事例から」 江畑 冬生(新潟大学)

14:30-15:30 

Documentation of Tofa: Work with the last speakers (in English)   Arzhaana SYURYUN (Institute for Linguistic Studies, Russian Academy of Science)

「トファ語の記録: 最後の話し手との共同作業」 アルジャーナ・シュリュン    (ロシア科学アカデミー・サンクトペテルブルク言語学研究所,日本語解説付きの英語)

15:30-16:00 

Discussion (in English, Japanese, or Russian)    

質疑応答(質問には英語・日本語・ロシア語のいずれを用いても構いません)

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2018年1月28日

松森晶子(他)『日本語アクセント入門』 書評と正誤表  【言語学】

2017年度2学期の「言語学演習」では松森(他)(2012) を通読しました.本書を選択した主な理由は次の通りです:

・「言語事実に基づいて言語分析を行う」ことの訓練として,日本語アクセントにおける音声的事実から音韻論的解釈を引き出すことを事例として学べる

・母語話者が無意識に活用している知識や法則を改めて掘り起こすことの訓練として,文字に書かれることのない点でアクセントが適している

・日本語諸方言の分析は,(個々人で事情の異なる既習言語とは異なり)ゼミ生の誰にとっても平等になる形で「非母語研究」を行うことが可能

・方言間の比較や通時的資料の検討を通じて,共時的研究だけでなく通時的研究にも触れることができる

本書が入門書として優れていることは間違いありません.しかしながら管見の限りでは,ローレンス (2013) を除き書評が出ていないようです.一方で「言語学演習」を通じて,新たに訂正すべきと思われる箇所も見つかりました.今後,本書を読む方々のためにも,ここに書き留めておきたいと思います.以下の正誤表作成にあたっては,「言語学演習」受講生諸君の多大なる貢献に感謝いたします.

[第1章] アクセントとは何か

[第2章] アクセントのしくみ

[第3章] アクセントの規則
 p.34の(2): 「平板型」には「起伏型」(仮定形)も含まれる.たしかに対立は保たれているが命名を「平板タイプ」などにして工夫する余地がある

[第4章] 助詞のアクセントと句音調
 p.53のコラム下から2行目: 下げ核の表記は(*)ではなく(')で良い

[第5章] 2型アクセント-鹿児島方言 
 p.66の(11):「ナッ」は下降調表記をすべきでは?
 p.70の(18): 「〇〇式」を複合語とは断言しにくい.本書では他の箇所でも複合と派生の区別があいまいである

[第6章] 3型アクセント-隠岐島の方言

[第7章] アクセントの単位
 p.97の(4)など: 上線による音調表記は音声実質に近づけているのか音韻解釈を施したものなのか,揺れているようだ.例えば2拍目が促音「ケッコンシキ」では3拍目から高くする(音声的)のに対し,2拍目が長音「ニューシャシキ」では2拍目から高くしている(音韻解釈を施している)
 p.99の(6): 東京方言における「担う単位」としての音節を設定するメリットはあるのだろうか?(拍だけで考えた方が経済的のように思う).この分析では「拍」「音節」「主母音」と説明の道具が多くならざるを得ない.
 7.4節: 「後ろから2つ目」の意味する内容が「拍」((10)の2行上)と「音節」((10)の1行下)で揺れる

[第8章] 声調のある方言
 p.109の(3): 4拍語のL1のモーラ数を示す〇が1つ足りない
 p.120の(14)(エ): 「⑥上昇式」に対する説明がない

[第9章] 外来語のアクセントと生産性
 p.127の下から2行目: アクセント核の位置に誤り.正しくは「アルバ´イト」(ローレンス (2013) にも指摘あり)
 p.129の4行目: 「ナガネギ」は平板型の方が一般的なので代わりに「タマネギ」を用いるのはどうか
 p.131の(8c)が欠けている(代わりに(8d)がある)
 p.136の(14): 「アニメーション」の長音が全角ハイフンになっている,「ハンディキャップ」の短縮語は一般的には「ハンデ」であり「ハンディ」は長音化し4拍語になることも,(アスパラガス)の後に読点が抜けている.(なおローレンス (2013) には「リストラ」に関する指摘あり)
 p.139のコラム: 頭高型の「ソ'ーセージ」が示されているが一般的には中高型の「ソーセ'ージ」
 p.143の3.の(10)「コンタクト」に(コンタクトレンズの意味)と注記があるが,「接触」など他の意味でも同じアクセント型ではないか? なお4.の(9)「マジック」は筆記具の場合と「手品」でアクセント型が異なる例

[第10章] 複合語のアクセント(1)
 p.154の(12d): すべて-3に特殊モーラの例が挙げられており,これらのみからは規則が「ー3」なのか「ー4」なのか判断できない.「宇宙コロニー」なども含めるべき
 p.157の最下行: アクセント核の位置に誤り.正しくは「×イチゴ'-ジャム」(ローレンス (2013) にも指摘あり)
 p.159の最下行: 「ミスプレー」は「フェアプレー」の誤り
 p.161の1行目: 「モノヤワラカ」は形容動詞なので「複合名詞」とは言えない

[第11章] 複合語のアクセント(2)
 p.175の(10):  京都方言の「カブカ」(H3)等を「中高型」と呼んでも良いのだろうか?
 p.175の(10): 東京の「フェアプレー」の上線の引き方にミスがある

[第12章] アクセントの歴史を知る
 p.185の3行目: 「(1)のリストの中では...」とあるが(1)には「夏」が無い.8行目も同様
 p.197の下から9行目: 「互いに語源」は「同源」の誤りか
 p.198の下から2行目: アシ(低平)にアスタリスクが抜けている

[第13章] アクセントと音韻

 

参照文献

松森 晶子・新田 哲夫・木部 暢子・中井 幸比古(編) (2012) 『日本語アクセント入門』三省堂.

ローレンス ウェイン (2013) 「〔紹介〕松森晶子・新田哲夫・木部暢子・中井幸比古編著『日本語アクセント入門』」『國學院雑誌』第114巻第6号,15-17.

2017年3月11日

第18回言語学ゼミ合宿  【言語学】

 「言語学ゼミ」では,2017年3月10日から11日にかけて合宿を行いました.参加者は学生6名と教員1名(江畑)の計7名でした.2年半ぶりの言語学合宿となった今回は上越市を訪れ,言語学を含めいろいろなトピックについて語り合いました.

 車2台(普通乗用車と非普通乗用車)で大学そばを出発します.高速をひた走り,まずは「麺屋あごすけ」で昼食です.開店直後に到着したにもかかわらず,すでに長い行列が・・・.でも長く待った甲斐のある味でした! 너무너무 맛있었어요!

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 続いて上越市水族博物館へ.ここではエイに感動し,ペンギンに癒されました.随所の顔出しパネルもきっちりコンプリートです.

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 宿は日本海を眼前に見渡す「ロイヤルホテル 小林」に.温泉(ゆず湯!)につかり,おいしい夕食をいただき(固形燃料のペース配分が大切!),その後は部屋での語らいへ.大学での4年間総括トークあり,youtube動画で爆笑あり,合宿の夜は更けていくのでした・・・.

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2017年2月10日

講演会「言語研究の諸問題:東アジアの言語の事例から」  【言語学】

コアステーション「言語学研究・言語教育センター」主催の講演会を,

2/24(金)に開催いたします.会場および資料準備の都合上,御参加の方は

江畑まで御一報頂けますと幸いです.どうぞよろしくお願いいたします.

 

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講演会: 言語研究の諸問題:東アジアの言語の事例から

 

15:0015:20「表音文字の非表音性:サハ語と韓国語の対照を中心に」

江畑 冬生(新潟大学)

15:2016:20「ウズベク語の従属節における諸問題」

日高 晋介(東京外国語大学大学院)

16:3017:30「本当におもしろいんだから!:朝鮮語における従属節の主節化」

黒島 規史(東京外国語大学大学院/日本学術振興会特別研究員)

17:30-18:30「総合討論」

2016年3月20日

シベリア先住民の食卓: 食べものから見たシベリア先住民の暮らし  【江畑 冬生】

いくつかのシベリア先住民族の伝統知を,食文化の側面から紹介した本が出版されました.「シベリアは酷寒の不毛地帯じゃない!」ということが伝われば幸いです.江畑はサハ民族・トゥバ民族に関して,「馬」「羊」「乳製品」「干し草集め」の4つの記事を書きました.ヨーロッパロシアとも一味違う,シベリア少数民族の文化の一端が分かる一冊です.

永山ゆかり・長崎郁(編)『シベリア先住民の食卓: 食べものから見たシベリア先住民の暮らし』東海大学出版部

2015年6月25日

第3回 対照言語学ワークショップ  【言語学】

7月25日(土)に,対照言語学ワークショップを開催いたします.学内外の教員と大学院生が,日本語・韓国語等にかんする発表を行います.御関心のある方は,江畑までご連絡お願いいたします.

日時:  2015年7月25日(土)12:0018:00

場所: 新潟大学 五十嵐キャンパス 総合教育研究棟  B354

続きを読む "第3回 対照言語学ワークショップ" »

2015年4月27日

講演会:シベリアの民族・言語・文化  【言語学】

 4月22日(水)の5限の時間に,講演会「シベリアの民族・言語・文化」を開催しました.ロシアの少数民族出身の研究者にも講演していただいた貴重な機会でした.なお本講演会は,科研費 若手研究(A)「チュルク諸語北東グループ未解明言語の調査研究: 包括的記述と史的変遷の解明」(研究代表者:江畑冬生)によるものであり,新潟大学 人文社会・教育科学系附置「言語科学研究センター」による活動の一環です.

プログラム
16:25-16:55 Peoples and Languages in Siberia: Introduction (in Japanese)
  Fuyuki EBATA (Niigata University)
  「シベリアに暮らす人々とそのことば」 江畑 冬生(新潟大学)
16:55-17:25 Tyvan Language and People (in English, with Japanese translation)
  Arzhaana SYURYUN (Institute for Linguistic Studies, Russian Academy of Science)
  「トゥバ語とトゥバの人々」 アルジャーナ・シュリュン
   (ロシア科学アカデミー・サンクトペテルブルク言語学研究所,日本語解説付き)
17:25-17:55 Discussion (in English, Japanese, or Russian)
(質問には英語・日本語・ロシア語のいずれを用いても構いません)P1040554.JPGP1040580.JPGP1040582.JPGP1040589.JPG

2014年12月 9日

日本エドワード・サピア協会の研究発表会に参加して  【言語学】

 今年度も国内外の様々な学会に参加しました.10月に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにて開かれた「日本エドワード・サピア協会第29回研究発表会」も,その1つです.サピアの名前を冠したこの学会は,日本において30年近い歴史を持っています.

 私のゼミや授業でも,サピアを取り上げることがあります.サピアという言語学者の名は,「サピア・ウォーフの仮説」により知られている部分が大きいと言えます.しかし実際には,サピアの関心は,北米原住民諸語の記述,言語類型論,歴史言語学,言語と文化など,広範にわたっています.少々難しい部分もありますが,『言語―ことばの研究序説 』(1998年,岩波文庫)などを手にとって見てみてください.サピアの考えは,現在でも決して色褪せたものではありません.

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第17回言語学ゼミ夏合宿  【言語学】

 「言語学ゼミ」では,2014年9月25日から26日にかけて合宿を行いました.参加者は学生5名と教員1名(江畑)の計6名でした.今回は寺泊や弥彦などを訪れつつ,言語学を含めいろいろなトピックについて語り合いました.

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寺泊から見た日本海

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弥彦神社です

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大吉出ました!!!(見えるかな?) 「学問:安心して勉学せよ」だそうです.良かった

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本殿の前で集合写真

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弥彦から見た日本海

2014年7月11日

講演会「言語で巡るシベリアの旅」の報告  【言語学】

2014年7月5日(土)新潟大学五十嵐キャンパスにて,講演会「言語で巡るシベリアの旅 -- 北方の人々のことばと暮らし」が行われました.日本の北方に分布する5つの民族の言語・人々・暮らしについて,「学外の講師+江畑」の5名が話題を提供しました.事前受付の質問に加え,当日の来場者からもたくさんの質問を頂きました.英語や日本語のような大言語だけでなく,こうした「小さな」言語にも独自の世界・文化が広がっています.それらは,我々の想像も及ばないような特異性を有していることもあれば,私たちにとって意外な親近感を抱かせるようなものもあることを気づかせてくれました.

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