「言語学読書合宿」の歴史 【イベントの記録】
今年で13回目を数え、津川温泉にて活発なゼミが開かれました。
○第13回 「言語学読書合宿」
日程:平成22年9月11日(土)~9月13日(月)
場所:津川温泉「清川高原保養センター」
課題図書:荒川洋平『日本語という外国語』講談社現代新書
参加者:15名
以下は、これまでの合宿の記録です。
第6回のNiiPhiSでは、講師に小田部胤久先生をお招きし、 「カール・レーヴィットと「二階建て」の日本──間文化性への一つの寄与」という表題でお話しいただきました。参加者は、新潟大学の学生・教員を中心に、学外からの方も含めて30名近くとなりました。
東北大学での教師時代、アメリカ時代、晩年というレーヴィットの遍歴に沿って、日本の近代化、東洋と西洋、古いヨーロッパと新しいヨーロッパといった問題に関する彼の思考が跡づけられました。
東北大学時代のレーヴィットは、近代化を目指した日本が西洋の思考を受容しようとしたことについて、それは「真の習得」とはみなしえないと断じます。真の習得のためには、異質なものの異質さを認めたうえでそれを自己化すること(他者の自己化)が必要なのに、日本(東洋)にはこのような態度が欠けているというのです。
表題にもある「二階建ての日本」という有名な言葉は、西洋的なものが、日本的なものとは別の階にあるかのように日本化されないままに上積みされているという矛盾的な状況を表わしています。
しかしレーヴィットはのちに、こうした見方を西洋自身にも向けました。つまり、西洋の思考はそもそもギリシア異教とキリスト教という二重性をもつ。そのうえ近代科学技術による変化も被ることで成立したのです。さらにアメリカについては、アメリカはヨーロッパの古代・中世という異質な伝統からいかに学ぶことができるのか、という問題があります。
今回の小田部先生のお話を通じて、他者の自己化という問題が、現代の日本の学生である私にとっても依然として重要な問題であることがわかりました。とくに私自身、西洋哲学を専攻しているため、その点をいっそう痛感した次第です。小田部先生、どうもありがとうございました。
第4回の NiiPhiS は、昨年12月に新潟大学に着任された青柳かおる先生を講師にお招きし、二十数名の参加者を得て、イスラームの婚姻論というテーマで開催されました。
今回のセミナーでは、ガザーリー(イスラーム思想史上最大の思想家の一人)、イブン・アラビー(ガザーリー以降のスーフィズムを代表する思想家)、カラダーウィー(現在、アラブ諸国だけでなく世界中のムスリムに大きな影響を持っている法学者)という3人のイスラム思想家の婚姻論に焦点があてられました。
スーフィズムからみたガザーリーの婚姻論と思想的背景にある存在論との結びつきについてお話があった後、ガザーリーとイブン・アラビーの比較(スーフィズムの思想における比較)、ガザーリーとカラダーウィーの比較(古典時代と現代の比較)が行われ、イスラム思想史の発展と多様性について学ぶことができました。
11月27日は、講師に竹峰義和さんをお招きして、第3回新潟哲学思想セミナー「ハリウッドの精神からの全体主義の誕生 アドルノ『文化産業』論をめぐって」が開催されました。新潟大学の学生と教員を中心として、20名以上が参加いたしました。