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イベントの記録 アーカイブ


2012年3月20日

第11回新潟哲学思想セミナーが開催されました  【NiiPhiS】

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[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程 高畑 菜子]

第11回新潟哲学思想セミナーは講師に吉田治代先生をお迎えし、「ブロッホ、アメリカ、多元的宇宙」のタイトルのもとで開催されました(参加者25名)。

ご講演では、ブロッホにおける多元的宇宙(Multiversum)という独特の多元主義のヴィジョンについて、とくにブロッホとアメリカとの関わりに焦点を当ててお話しいただきました。吉田先生は、多元的宇宙の概念はアメリカの哲学者ウィリアム・ジェイムズに由来しており、アメリカとの関連は非常に重要なテーマであるとして、従来の研究ではほとんど言及されることのなかったアメリカ思想のブロッホへの影響を辿ることこそ、ブロッホのいう多元的宇宙のヴィジョンへと到達する道であると指摘されます。

吉田治代氏

吉田先生によれば、ブロッホにおけるアメリカ思想のポジティヴな受容がいつ行なわれたのかを遡ってみると、第一次世界大戦の時代に行き当たり、スイス亡命時代にブロッホが集中的にアメリカの問題に取り組んでいたことが見出されます。しかし、ブロッホはアメリカが参戦を決めた1917年に急遽アメリカ思想を取りこんだというわけではなく、戦前からすでに興味をもっていたと考えられるそうです。というのも、20世紀初頭のドイツでは、新たな思想運動である「プラグマティズム」への関心が高まっていたからです。

ドイツにおけるプラグマティズム受容は、ハンス・ヨアスによれば不幸な誤解の歴史とでもいうべきものであり、フランクフルト学派と同様、ブロッホもまたこの不幸な歴史にその名を残しています。『希望の原理』においてブロッホは、プラグマティズムをマルクス主義とは相いれない精神的に劣ったものと見なし、アメリカ資本主義と結びつけつつ批判しています。

フランクフルト学派の陰鬱なアメリカ観にも通じる、この「マルクス主義者ブロッホ」の「アンチ・アメリカニズム」は広く知られていますが、それだけに1910年代のブロッホにおけるアメリカ思想のポジティヴな受容は注目すべきものだと、吉田先生は指摘されます。従来、社会主義革命への希望と考えられてきたブロッホの希望の哲学、可能性の哲学のもう一つの起源をここに見ることが可能なのではないか、と問いかけられました。

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2012年2月 7日

今年度も卒業論文発表会終わりました。  【イベントの記録】

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2011年12月 5日

第10回新潟哲学思想セミナーが開催されました  【イベントの記録】

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 第10回セミナーでは、講師に筑波大学の佐藤嘉幸先生をお迎えして、「規律的統治から新自由主義的統治へ──後期フーコーと権力の諸問題」というテーマでお話いただきました。
 日本だけではなく、世界各国で(とくに先進国において)抱えている財政問題を解決すべく、いまや多くの世界では従来の政治体系である福祉国家型国家から新自由主義型国家へと移行されてきている。このような福祉国家的統治から新自由主義的統治への移行によって、どのように権力構造は変わるのだろうかというまさに現代が直面している問題、しかも避けては通れないような重大な問題が今回のテーマでした。
 会場には多くの学生や教員、地元の方々の参加があり、質疑応答では、時間いっぱいまでさまざまな議論が飛び交いました。会場にいらっしゃった城戸先生をはじめ、市民の方からの質問にも、佐藤先生は丁寧に、わかりやすく、ラジカルに回答されたので、私たち学生にとっても論点が見えやすく、質疑応答の内容も理解しやすく感じられました。
IMG_2863.JPG  議論の熱が冷めないまま、予定時刻を過ぎてしまったのですが、会場を移し、恒例の懇親会において──ある意味、この懇親会によって、この追補的な会によって、むしろこの講義の理解がはじめて深まるのではないかと毎回個人的に感じているのですが──、今度は学生を中心に佐藤先生にさまざまな質問をさせていただきました。佐藤先生は学生の質問に対しても、親身に、丁寧に、わかりやすく答えてくださいました。懇親会もおおいに盛り上がり、大変有意義で、貴重な時間となりました。
 以下では、講義と質疑応答の要点を紹介したいと思います。

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2011年10月 5日

第14回 言語学ゼミ夏合宿の記録  【イベントの記録】

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 人間学講座言語学ゼミは、平成23年9月10日(土)~12日(月)にかけて、「清川高原保養センター」(新潟県東蒲原郡阿賀町京ノ瀬4851)において「第14回言語学読書合宿」を行った。3月に退官された山崎幸雄先生をお招きし、OBも加わり、総勢18名の参加を得て、楽しく有意義な合宿となった。今回の課題図書、水谷静夫『曲がり角の日本語』(岩波文庫 2011年)をレポータを決めて輪読した。4年生は卒論の内容について発表した。
 なお、下の写真は、7月期末のコンパの様子です。大変楽しく撮れましたのでこちらも掲載します。(記=福田)

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2011年6月14日

卒論構想発表会終了。  【イベントの記録】

先日の卒論構想発表会、みなさんお疲れ様でした。当日の模様を写真でお伝えします。

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2011年4月20日

第8回新潟哲学思想セミナーが開催されました  【NiiPhiS】

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第8回の新潟哲学思想セミナーでは、講師に山形大学の清塚邦彦先生をお迎えし、「フィクションとは何か:フィクションと現実という対比について」というテーマでお話しいただいたあと、新潟大学の井山弘幸先より「お笑いにおけるリアルとは何か」についてお話しいただきました。セミナーには30名ほどの参加者があり、多くの学生や教員のほか、3年前に新潟大学を退官された佐藤徹郎先生もお越しくださいました。

清塚邦彦氏

清塚先生は、まず最初に、ご自身の著書『フィクションの哲学』のおおよその内容について紹介されました。清塚先生は、フィクションをひとまず「想像による物語」として捉えて、その基本的な特徴を「作者と語り手の不一致」という点に求めておられます。その上で清塚先生は、フィクションにも現実と符合するものがあったり、フィクションではない語りのなかにも実在しない対象や出来事に言及することがあるなど、フィクションと現実の違いについて、あらためて捉えなおされます。そして、フィクションはリアリティの対義語ではなく、むしろリアルなフィクションがあると清塚先生は仰い、その特徴について分析的に議論を展開されました。

井山弘幸氏

つぎに井山先生が、笑いにおけるフィクションとリアリティについて、落語や漫才から豊富な例をとりあげて、お話しくださいました。落語とはフィクションのなかで人間の業を肯定するものであるという立川談志のテーゼをめぐって、さらには漫才というフィクションにおいて、わざと漫才師が現実世界のことを話して笑いをとる、いわゆる「リアルぼけ」の方法をめぐって、落語や漫才ではリアリティとフィクションの関係がとても重要になることをお話しいただきました。

その後の質疑応答の時間では、特に清塚先生と新潟大学の先生方との間に、ふだんは見られることのない、白熱した議論が行われました。

今回はお二人の先生による講演でしたが、フィクションとリアリティという、いっけん相反する概念についてさまざまな議論が交わされ、あらためてその関係を考えなおすことができました。清塚先生ならびに井山先生、ありがとうございました。

[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科生 中川 祐樹]

2011年1月31日

卒業論文発表会終わりました。  【イベントの記録】

 昨日29日、人間学履修コースでは今年も卒業論文発表会がありました。
 卒論は大学四年間を締め括る集大成の事業。四年生のみなさん、本当にお疲れ様でした。
 写真は発表会&追い出しコンパの様子です。

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2010年12月12日

第7回新潟哲学思想セミナー終了。  【イベントの記録】

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第7回セミナーでは、講師に南山大学の大竹弘二先生をお迎えし、「カール・シュミットのアクチュアリティ――近代主権国家の歴史的使命とその終焉」というテーマのもとお話しいただきました。当日は、悪天候にもかかわらず約二十名の方が足を運んでくださいました。

大竹先生は、ご自身の『正戦と内戦──カール・シュミットの国際秩序思想』の内容を踏まえた上で、シュミットの考える「近代主権国家概念の誕生と没落」についてお話しされました。

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シュミットによれば、近代主権国家は、16世紀の宗教戦争を克服する使命を負って生まれ、したがって歴史的・地域的にヨーロッパに固有のものという性格をもっていました。しかし19世紀後半以降、主権国家概念が全世界に広まり、その固有性を失い没落していきます。その背景には、ホッブズの政治的自由主義という近代国家概念に内在する要因と、イギリスによる海洋進出という外在的要因がありました。そうしてもたらされた産業・技術が、主権国家にとっての新たな課題になっていきます。

シュミットは、一方でマキァヴェッリらの唱える技術的国家観の無規範性を批判しながら、他方で評価してもいました。そこから着想を得、彼は例外状況における行政府の「措置(Maßnahme)」に規範性を与えた上で法律に優先させるという主張を展開するに至ります。しかし、戦後の経済発達に伴い行政措置の対象が「生存配慮」へと変わったために、シュミットの技術国家への見方は再び否定的なものになっていった、と大竹先生は考えていらっしゃいます。

講演の後は、多くの教員・学生から、それぞれの研究分野に関連した質問が出され、議論に幅のある質疑応答が行われました。

大竹先生は、シュミットの思想の変遷を、歴史的状況を踏まえてわかりやすく説明してくださったので、シュミットの思想が、行政機能がますます肥大化する現代政治に対する鋭い批判になりうるということを理解することができました。あらためて、大竹先生ありがとうございました。

[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程・保坂 希美]

2010年10月15日

卒業論文中間発表会終了。  【イベントの記録】

先日の卒論中間発表会は無事終了しました。当日の模様を写真でお伝えします。みなさん本当にお疲れ様でした。

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2010年9月23日

大学院生合宿報告  【イベントの記録】

9月19、20日と密やかに院生合宿が行われました。合宿地は五頭です。
参加人数も少なかったので移動には自家用車(城戸先生、中川君)を使用しました。
私は中川君の車に乗車したのですが、城戸先生の車に付いていくのが大変だったとのことです。
さて三連休の混雑もあり昼飯が予定外の場所になりつつも無事、今回お世話になる珍生館に到着。お寺の目の前の風情ある宿です。
早速、論文の中間発表………の前に近くの公衆浴場で一休み。温めのお湯が癖になる感じです。
珍生館 華報寺

中間発表自体についてはすいませんがノーコメントでお願いします(´・д・`)
今後より一層修士論文に励まなければいけないことだけは確かです。
研究会の様子

夕飯は温泉で炊いたお米に揚げたての天麩羅、牛タンの味噌焼きなど大変美味でした。

さて宿の風呂に入ったらお楽しみの宴会です。なお、珍生館は持ち込みOKとのこと。
栗のにごり酒やらマッコリやらと種類は豊富、つまみもたっぷりとあります。
何しろ7人で1万5千円分もありますからね。
………
……

案の定残りました(ノ∀`) どう考えても買いすぎでした。反省。

翌日は登山をするという予定ですので早めにお開き。まぁ院生らはみんなあんまり寝てなかったみたいですから。

2日目です。天気は曇りでしたが夜まで持つ、という天気予報を信じ予定通り五頭登山へ。
午前10時ごろに登山開始。それにしても登山するとは思えない服装です。
私は普通に大学に行くような格好でしたし、中川君に至ってはコンビニ帰りのような格好 ………まぁ若いから大丈夫でしょう。

そんなこんなで3時間弱かけて五の峰に到着。流石に寒いです。
ちなみに五頭山は五の峰~一の峰と五頭山頂から成り立っています。
五の峰から、間違えて沢下りのルートに行ったりするトラブルがありつつも、無事に全ての峰を踏破し五頭山頂へ到着。
なんと言うか、一の峰や五の峰ほど視界が開けてない感動が薄いような気もします。
むしろ私は一の峰から五頭山頂にかけての山の稜線を歩いている感じに感動しました。
五頭山頂 稜線から
山から降り、再び登山口に戻ってきた頃は既に午後5時。7時間ほどかかった計算になります。
まぁほとんど山に登ったことのない人が大半の中、日が暮れる前に戻れてよかったと言うべきでしょう。

帰りは杉村温泉、薬師の湯(ラジウム泉)で疲れを癒し、全日程終了です。お疲れ様でした。

修士論文をいよいよ仕上げていかなければならないという意欲が高められた上に、一人ならすることもなかっただろう登山をしたことは非常に有意義かつ充実した合宿だったかと思います。そして今後山登りをする際にGパンを履くことはないでしょう(笑)

最後に幹事をしてくれた浦上さん、運転手の城戸先生に中川君、お疲れ様でした。
そして、みなさんありがとうございました。

[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程・大塚貴匡]