第2回新潟哲学思想セミナーが開催されました。 【イベントの記録】
21日は、講師に熊野純彦さんをお招きして、第2回新潟哲学思想セミナー「回帰するパラドクス──第二アンチノミー証明・考」が開催されました。新潟大学の学生を中心に、20名以上の参加者によるセミナーとなりました。
今回の熊野さんのお話は、カント『純粋理性批判』の「超越論的弁証論」のなかで、これまで比較的顧みられてこなかった第二アンチノミーの議論に光を当てるものでした。第二アンチノミーは、世界には単純なものと合成されたものが存在するか否かをめぐるものですが、熊野さんは、このアンチノミーに至るカントの複雑な議論を明快に整理した後、一見、難解で専門的なこのアンチノミー論の背後には、古代ギリシア以来の「一なるもの」と「多なるもの」についての伝統的な問いに対するカントなりの対決がある点を指摘され、それが、エレア学派の無限分割のパラドックスやライプニッツのモナドロジーへの新たな取り組みへと通じているというとても興味深いお話でした。
セミナー自体は、たんなる講義調ではなく、熊野さんが、カントの難解なドイツ語を丁寧に解きほぐすという演習スタイルで行われ、参加者の皆さんは、臨場感に満ちた哲学の「現場」を十二分に味わうことができたのではないかと思います。
参加された皆さん、そして熊野さん、どうもありがとうございました。