« 2012年2月 | メイン | 2012年4月 »

2012年3月 アーカイブ


2012年3月28日

【卒業論文】ライプニッツにおける自由と偶然性  【卒論・修論の紹介】

【概要】今井蕗子「ライプニッツにおける自由と偶然性」

本論文では、ライプニッツ(Gottfried Willhelm Leibniz, 1646-1716)の『ライプニッツ・アルノー往復書簡』、『形而上学叙説』、『弁神論』を用いて、そこに述べられている自由(liberté)に関する議論を見ていく。これらのテキストの中で、ライプニッツは偶然性、自発性、叡智を自由に必要な条件として挙げている。この三つの中でも特に多くの議論がなされている偶然性に焦点を当て自由について考察した。

自由は偶然性と密接に関わるとライプニッツは考えている。ライプニッツによると、偶然性があることによって自由論を脅かす議論である運命論が覆され、自由が保障される。『ライプニッツ・アルノー往復書簡』では、『形而上学叙説』第13節の「個体的実体の概念が、それに起こり得るすべてのことを一度に合わせて含んでいる」という記述が議論の的になる。この記述が真ならば、人間の行為や世界で起こる出来事は予め決まっていることになり、自由が失われる。しかしライプニッツは運命論を支持しているのではない。ライプニッツは上記の記述を主張しながらも、個体的実体の偶然性を持ちだすことで自由を確保した。個体的実体は個体概念によって構成されており、この個体概念は神の偶然的な選択によって選ばれ個体的実体に内在している。偶然性と対立し自由を妨げるものは、何らかの選択をする余地を与えない形而上学的な必然性だが、偶然性には、このような絶対的必然を排除する働きがある。そのため、偶然性があることによって自由が可能になる。

個体的実体が集まると世界ができるとライプニッツは考えていた。個体的実体の組み合わせは無限に考えられ、その数だけ可能世界がある。ライプニッツによると、可能世界と現実世界の違いは実際に存在するかどうかの違いだけである。神がある個体的実体を選択するとき、その個体的実体そのものだけでなく、同じ世界に属するほかの個体的実体との関係にも配慮して選択をするため、神は結果的に一つの最善の世界を選択することになる。可能世界に属する個体的実体の選択は、個体的実体に属する個体概念の選択と同様に、偶然的になされるので、自由が入り込む余地がある。

個体的実体を選択したり世界で起こる出来事を決定しているのが神であっても、人間に自由はある。ライプニッツの考えでは、人間の自由と神の自由は対立しない。なぜなら人間と神はどちらも理性を持っており、理性的に考えることで最も善い行為を選択することができるからである。ライプニッツは主知主義的な自由論を主張し、理性を用いて最善の選択をすることが自由だと見なした。理性を持つ人間と神は、自由や道徳において同じ価値観を共有しているため、神と人間の自由は両立する。

ライプニッツの自由論においては、世界やその構成員である個体的実体を支配する形而上学的な秩序よりも、道徳的な枠組みの方が優位に立つことが最終的にわかった。ライプニッツは調和や秩序を重んじる一方で、理性を伴う道徳的、実践的な判断や決定をするときに人間の自由が発揮されると考えていたことが明らかになった。


今井蕗子「ライプニッツにおける自由と偶然性」全文 (PDF)

2012年3月26日

公開研究会「人間学の革新と再構築」  【哲学】

人間学の革新と再構築
「感応」と「情動」を介することで哲学的人間学の革新は可能か?

──グンター・ゲバウアー教授招待講演

■ 日時:2012年3月26日(月)13:30~17:30
■ 会場:新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」講義室A
(025-248-8141)──新潟駅連接「プラーカ1」2F

13:30~14:00  語り(Aufführung)
鈴木 孝庸(新潟大学人文学部教授)
平家琵琶の弾き語り

14:15~15:00  報告(Bericht)
栗原 隆(新潟大学人文学部教授)
Natur und Leben──Schellings "Ideen zu einer Philosophie der Natur" und der junge Hegel

15:15~15:45  紹介(Einführung)
小松 恵一(仙台大学教授)
Einführung in Professor Gebauers Gedanken

15:45~17:15  講演(Vortrag)
Gunter Gebauer(ベルリン自由大学教授)
Was heißt leidenschaftlich handeln?

17:15~17:30  質疑応答(Frage und Antwort)

使用言語:ドイツ語・日本語 入場無料/事前登録不要
主催:科研費(基盤A)共同研究「共感から良心に亘る『共通感覚』の存立機制の解明、並びにその発現様式についての研究」(代表:栗原 隆)
問い合わせ先 E-mail: 栗原 隆 kurihara@human.niigata-u.ac.jp

2012年3月24日

祝!ご卒業  【イベントの記録】

昨日は卒業式がとりおこなわれました。
卒業生のみなさん、本当におめでとうございます!

IMG_3101.JPG IMG_3123.JPG IMG_3133.JPG IMG_3146.JPG IMG_3150.JPG IMG_3152.JPG IMG_3157.JPG IMG_3159.JPG IMG_3162.JPG IMG_3165.JPG IMG_3181.JPG IMG_3200.JPG IMG_3206.JPG IMG_3223.JPG

2012年3月22日

研究会報告「カント哲学の脱構築」  【イベントの記録】

Prof. Steinvorth

2012年2月16日、新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」において、ウルリッヒ・シュタインフォルト教授をお迎えし、「カント哲学の脱構築」と題した公開研究会が開催されました。今回のセミナーでは、人文学部人間学講座の教授陣をはじめ、外部からお越しくださった先生方によって、英語やドイツ語を交えた議論が繰り広げられ、そのおかげで大変実りのある研究会になったと思います。

以下、大熊洋行氏(東京大学博士課程)による紹介と、シュタインフォルト氏による講演をまとめました。

[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程 中川 佑樹]

続きを読む "研究会報告「カント哲学の脱構築」" »

2012年3月20日

第11回新潟哲学思想セミナーが開催されました  【NiiPhiS】

NiiPhiS 11

[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程 高畑 菜子]

第11回新潟哲学思想セミナーは講師に吉田治代先生をお迎えし、「ブロッホ、アメリカ、多元的宇宙」のタイトルのもとで開催されました(参加者25名)。

ご講演では、ブロッホにおける多元的宇宙(Multiversum)という独特の多元主義のヴィジョンについて、とくにブロッホとアメリカとの関わりに焦点を当ててお話しいただきました。吉田先生は、多元的宇宙の概念はアメリカの哲学者ウィリアム・ジェイムズに由来しており、アメリカとの関連は非常に重要なテーマであるとして、従来の研究ではほとんど言及されることのなかったアメリカ思想のブロッホへの影響を辿ることこそ、ブロッホのいう多元的宇宙のヴィジョンへと到達する道であると指摘されます。

吉田治代氏

吉田先生によれば、ブロッホにおけるアメリカ思想のポジティヴな受容がいつ行なわれたのかを遡ってみると、第一次世界大戦の時代に行き当たり、スイス亡命時代にブロッホが集中的にアメリカの問題に取り組んでいたことが見出されます。しかし、ブロッホはアメリカが参戦を決めた1917年に急遽アメリカ思想を取りこんだというわけではなく、戦前からすでに興味をもっていたと考えられるそうです。というのも、20世紀初頭のドイツでは、新たな思想運動である「プラグマティズム」への関心が高まっていたからです。

ドイツにおけるプラグマティズム受容は、ハンス・ヨアスによれば不幸な誤解の歴史とでもいうべきものであり、フランクフルト学派と同様、ブロッホもまたこの不幸な歴史にその名を残しています。『希望の原理』においてブロッホは、プラグマティズムをマルクス主義とは相いれない精神的に劣ったものと見なし、アメリカ資本主義と結びつけつつ批判しています。

フランクフルト学派の陰鬱なアメリカ観にも通じる、この「マルクス主義者ブロッホ」の「アンチ・アメリカニズム」は広く知られていますが、それだけに1910年代のブロッホにおけるアメリカ思想のポジティヴな受容は注目すべきものだと、吉田先生は指摘されます。従来、社会主義革命への希望と考えられてきたブロッホの希望の哲学、可能性の哲学のもう一つの起源をここに見ることが可能なのではないか、と問いかけられました。

続きを読む "第11回新潟哲学思想セミナーが開催されました" »

アーカイブ

Powered by
Movable Type 5.2.3