第22回新潟哲学思想セミナーでは、講師に岡山大学の岡本源太先生をお招きし、「ジョルダーノ・ブルーノを読むジョン・トーランド――汎神論の発明」というテーマで開かれました。
アイルランドの自由思想家であるトーランドがルネサンスの哲学者であるブルーノからどのような影響を受け、汎神論を発明するにいたったのかについて、ブルーノとトーランドの思想を比較しながら、お話をしていただきました。トーランドは意見の多様性を推奨し、中立無差別の立場について述べていたそうです。また、世界や宇宙を有限なものとして捉えるのではなく、無限に広がる世界として捉えるという考え方はトーランドの哲学の核心といえます。
無限の宇宙を説明するにあたって必要になるのが、あらゆる物質に内在している「運動」という力です。この力とは、私たちが目で見ることができるような物体の移動という運動だけではなく、能動的な運動と逆の受動的な力も含まれています。あらゆる物質に内在しているこの力が限定的に起こることで、私たちが目で見ることができるような運動を引き起こすそうです。
無限の宇宙のなかで、あらゆる物質は変化し、循環しています。例えば、熱いものと冷たいものは比較すれば対立的ですが、状態が異なるだけの同じものであるともいえます。つまり、対立物は存在せず、すべて比較による相対物と考えられます。そのため、宇宙という全体のなかでは、何一つ消滅せず、内在的な力によって物質の状態が変化し、破壊や産出と呼べる現象が起きています。このような相反のなかで万物は変化し、流転によってあたかも円のように循環しています。この無限に循環する宇宙を無限の宇宙と考えます。
言い換えれば、相反するものは流転によって一致するとみなすことができます。人間が使う概念区分はすべて比較によって生じる相反的なものであり、名前はすべて恣意的なものであるといえます。そのような相反的なものは修辞学を用いて、その都度適切かどうか考えなければなりません。哲学以外においては、ブルーノは宗教を想定的なものとして捉えていきますが、トーランドは自由検討のなかで真理や正しい道を選択できるとして、プロテスタントを信仰したそうです。
今回のセミナーでは、ジョン・トーランドやジョルダーノ・ブルーノの哲学だけでなく、それらをとおして、ルネサンス哲学の考え方について知ることのできる貴重な機会となりました。
最後になりましたが、今回のセミナーでご講演いただいた岡本先生に感謝を申し上げ、第22回哲学思想セミナーの報告とさせていただきます。
[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程 波多野支希]