栗原 隆 編
『世界の感覚と生の気分』
ナカニシヤ出版
A5判・310頁
税込定価 3990円
ISBN978-4-7795-0626-0
2012年3月28日発行
⇒出版社紹介ページ
【本書の紹介文】
われわれが合理的な知を奉じる中で看過してきた
共感・気分・雰囲気など、「感性的なもの」による世界の捉え直しを、
哲学・美学・心理学という多方面から探究。
世界の豊かさや生の実感の回復を目指す哲学的人間学。
私たちの人間学講座からは、編者の栗原隆先生をはじめ、宮﨑裕助が執筆陣に加わり、前スタッフの山内志朗先生のほか、新潟大学人文学部では、細田あや子先生、福島治先生、白井述先生が寄稿されています。以下は「目次」です。
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2012年2月16日、新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」において、ウルリッヒ・シュタインフォルト教授をお迎えし、「カント哲学の脱構築」と題した公開研究会が開催されました。今回のセミナーでは、人文学部人間学講座の教授陣をはじめ、外部からお越しくださった先生方によって、英語やドイツ語を交えた議論が繰り広げられ、そのおかげで大変実りのある研究会になったと思います。
以下、大熊洋行氏(東京大学博士課程)による紹介と、シュタインフォルト氏による講演をまとめました。
[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程 中川 佑樹]
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[文責=新潟大学大学院現代社会文化研究科修士課程 高畑 菜子]
第11回新潟哲学思想セミナーは講師に吉田治代先生をお迎えし、「ブロッホ、アメリカ、多元的宇宙」のタイトルのもとで開催されました(参加者25名)。
ご講演では、ブロッホにおける多元的宇宙(Multiversum)という独特の多元主義のヴィジョンについて、とくにブロッホとアメリカとの関わりに焦点を当ててお話しいただきました。吉田先生は、多元的宇宙の概念はアメリカの哲学者ウィリアム・ジェイムズに由来しており、アメリカとの関連は非常に重要なテーマであるとして、従来の研究ではほとんど言及されることのなかったアメリカ思想のブロッホへの影響を辿ることこそ、ブロッホのいう多元的宇宙のヴィジョンへと到達する道であると指摘されます。
吉田先生によれば、ブロッホにおけるアメリカ思想のポジティヴな受容がいつ行なわれたのかを遡ってみると、第一次世界大戦の時代に行き当たり、スイス亡命時代にブロッホが集中的にアメリカの問題に取り組んでいたことが見出されます。しかし、ブロッホはアメリカが参戦を決めた1917年に急遽アメリカ思想を取りこんだというわけではなく、戦前からすでに興味をもっていたと考えられるそうです。というのも、20世紀初頭のドイツでは、新たな思想運動である「プラグマティズム」への関心が高まっていたからです。
ドイツにおけるプラグマティズム受容は、ハンス・ヨアスによれば不幸な誤解の歴史とでもいうべきものであり、フランクフルト学派と同様、ブロッホもまたこの不幸な歴史にその名を残しています。『希望の原理』においてブロッホは、プラグマティズムをマルクス主義とは相いれない精神的に劣ったものと見なし、アメリカ資本主義と結びつけつつ批判しています。
フランクフルト学派の陰鬱なアメリカ観にも通じる、この「マルクス主義者ブロッホ」の「アンチ・アメリカニズム」は広く知られていますが、それだけに1910年代のブロッホにおけるアメリカ思想のポジティヴな受容は注目すべきものだと、吉田先生は指摘されます。従来、社会主義革命への希望と考えられてきたブロッホの希望の哲学、可能性の哲学のもう一つの起源をここに見ることが可能なのではないか、と問いかけられました。
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